Uber車の死亡事故、センサーは機能していたのか?:深まる疑問(1/2 ページ)
Uberの自動運転車が起こした、歩行者の死亡事故。地元警察が公開した映像を見ると、高性能なはずのセンサー類が、歩行者をどの程度検知できていたのか、大いなる疑問が残る。
地元警察が事故時の映像を公開
米国アリゾナ州テンペの警察当局が2018年3月22日(現地時間)、死亡事故を起こしたUberの車載カメラ映像を公開した。その結果、EE Timesの多くの読者を含む技術コミュニティーで、新たな疑問が数多く生まれることとなった。
2018年3月18日(現地時間)の夜に起きたUberの自動運転車による死亡事故については、責任の所在を追求する前に、国家道路交通安全局(NHTSA)と国家運輸安全委員会(NTSB)による報告を待つのが当然ながら賢明であろう。
だが、技術コミュニティーは、今回の死亡事故がどうすれば避けられたのか、今すぐにでも検討し始めるべきだろう。
衝突時の映像を見ると、女性が道を渡ってきた時、自動走行車が停止はおろか減速すらしなかったことが分かる(しかも女性は、ものすごいスピードで横断したり、飛び出してきたりしたわけでもない)。Linley GroupのシニアアナリストであるMike Demler氏は、このときの自動運転車の挙動を「100万米ドルの疑問」と表現した。
Demler氏は次のように述べる。「Uberは次の質問に答える必要がある。あのような時間帯に道路を走行していた目的は何か? 夜間走行テストだったのか? レーダーやLiDAR(ライダー)は機能していたのか? ソフトウェアは緊急事態に全く反応できなかったのか?」
センサーは歩行者を検知できていたのか?
多くの自動車専門家にとって衝撃的だったのは、Uberの自動走行車(Volvoの「XC90」)に搭載されたレーダー、LiDAR、視覚センサーなどが、いずれも歩行者を検知していなかった可能性があることだ。そして、(十分に機能していたようにみえるカメラの映像によれば)安全を監視するべきはずの人間のドライバーも、道路には目を向けていなかったのである。
VSI Labsの設立者兼主席アナリストであるPhil Magney氏は、EE Timesに対し「走行テスト中に一部のセンサーや機能が一時的に停止していたなどの事情がない限り、自動運転向けに搭載したセンサー群が歩行者の検知に失敗したのは、衝撃的な出来事だ」と述べた。
結論を急ぐ前に、筆者は「Uberの自動運転車に搭載されたセンサーのうち、道路に現れた女性を最適に検知できたはずなのは、理論上どれだったのか」という質問を、Demler氏とMagney氏に投げかけた。
Magney氏は「VSI Labsは、今回の事故ではLiDARが最も有効だったのではないかと考えている。とはいえ、レーダーとカメラの両方またはいずれか一方だけでも、歩行者の検知は十分可能だったはずだ」と述べた。
一方、Demler氏は「映像で見た距離なら、全てのセンサーが、自転車を押しながら道を横断していた女性を検知できただろう。衝突が起きたのは、ヘッドライトが女性を照らしてから1〜2秒後だが、本来ならば、自動運転車のカメラは、ヘッドライトが女性を照らした瞬間にその姿を検知できたはずだ」と述べた。
一方でDemler氏は「事故が暗闇の中で起きたことを考慮すると、まずレーダーとLiDARが女性を検知できたはずだ。事故を起こした自動車は時速38マイル(およそ時速60km)で走行していたと報道されているが、近距離レーダー(SRR)でも最大100m先まで探知できる。例えば、Texas Instrument(TI)は、同社のホワイトペーパーで、あるSRRの検知範囲が80mだと明言している。そうなると、今回事故を起こした車は、衝突の4〜5秒前には女性を検知できたはずだ」と述べた。
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