AMDは2016、Intelは2014……。最新CPUチップの刻印が意味するもの:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(23)(2/3 ページ)
今回は、脆弱性問題で揺れるAMDやIntelの最新プロセッサのチップに刻まれた刻印を観察する。チップに刻まれた文字からも、両社の違いが透けて見えてくる。
「Core i9-7900X」と「Ryzen 5 2400G」のチップを観察
図2は、2017年に発売されたIntelの「Core i9-7900X」(左)と2018年にAMDから発売された「Ryzen 5 2400G」(右)のチップ上の年(西暦)情報とチップ開封後に配線層を剥離したチップの写真である。チップには開発された年が搭載される。開発年以外にもプロジェクトコード名や製品型名、時にはシリコンアートと呼ばれる絵柄が搭載されることもある。開封したチップは小さいため、顕微鏡を用いチップ型名や西暦の記載を確認する。
Intelは長年Coreファミリーの最上位を「i7」とし、4コアCPUを用いてきた。しかし2017年に台湾で開催された展示会「COMPUTEX」で、「i9」を発表。2017年に、最大18コア/36スレッドというチップ(Core i9-7980XE)も発売されている(18コア品は本連載で別途取り上げる)。図2に示したCore i9-7900Xは、10コア版であり。2017年に発表、発売されたチップだが、シリコン上には「2014」と刻まれている。同じ2017年にAMDは16コア版のRyzen Threaripper 1950Xを発売しているが、シリコンには2016年と記載されている。また2018年2月に発売されたAMDの新APUプロセッサであるRyzen 5 2400Gにも図2のように「2016」と刻まれている。
発売の3年も前に設計開発が完了していたi9-7900X。一方で1年前に開発されたRyzen Threaripper 1950X。市場にはほぼ同時期に投入されているが、仕込まれた時期には2年もの差がある。この差をどのように考えればよいのだろうか。
図3は、大々的には宣伝されていないIntelの組み込み用プロセッサ「Apollo Lake」(開発コード名/2016年発売)と「Gemini Lake」(同/2018年発売)のチップ表面の様子である。それぞれ発売の2年前に当たる西暦が記載されている。
2014年はIntelが最初の14nmプロセス採用プロセッサである「Core M」をリリースした年である。その後、多くの14nmプロセス製品をリリースし、2018年現在も14nmの第3世代プロセスである「14nm++」で新製品をリリースしている。TSMCやSamsung Electronicsは2017年に10nmプロセス品の製造に踏み切っているが、Intelは2018年に10nm製品をリリースする模様であり、TSMC、Samsungらの後を追う格好となっている。
2018年の今も淡々粛々と?
しかし、今なおIntelがリリースを続ける14nmプロセス品の多くは、2014年と記載されている。
このことから「Intelは2014年に多くの製品の設計開発の仕込みを終わらせていて、それを2017年、2018年の今も“淡々粛々”と順を追って発表し、発売しているにすぎない」と言えるのではないだろうか!
さらに言えば、既にIntel内では、10nm世代のかなり先まで新プロセッサの設計開発を終えているはずだ。そしてIntelは、歩留まりを最大化した上で、14nm世代品同様に、10nm世代品を「淡々粛々」とリリースし、組み込み系から最上のサーバー向けコンピューティングまでの面のような製品群を作り上げていくのではなかろうか。
一方、AMDは、自社工場を持たないファブレスカンパニーに転身し、自社ブランドのGPU、CPU、APUはGLOBALFOUNDRIESが、カスタム系チップ(例えばMicrosoftのXbox One XやソニーのPlayStation 4向け)はTSMCが製造している。AMDの多くのチップ上の西暦記載が2016となっているのは、2016年にGLOBALFOUNDRIESの14nmプロセスの生産が本格的に立ち上がったからなのだろう。
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