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AMDは2016、Intelは2014……。最新CPUチップの刻印が意味するものこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(23)(1/3 ページ)

今回は、脆弱性問題で揺れるAMDやIntelの最新プロセッサのチップに刻まれた刻印を観察する。チップに刻まれた文字からも、両社の違いが透けて見えてくる。

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業界を挙げて対策が行われている「CPU脆弱性問題」


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 2017〜2018年はIntel、AMDのプロセッサに「Meltdown/Spectre」という脆弱(ぜいじゃく)性があることが明らかになり、各社が対策に追われている*)。修正のためのOSやパッチが数多く配布され、業界を挙げての対策が進んでいる。詳細は割愛するが、アーキテクチャそのものに潜む脆弱性のため、根本的な対策は性能を落とすか、ハードウェア修正し、新チップを作ることしかない可能性がある。とは言え、上記のようにハードウェア、ソフトウェア、OSなどの対策を、業界を挙げて行っているので、良き方向へと舵は切られた。

*)本問題はx86系プロセッサ固有の問題ではなく、一部のArmプロセッサにも同じ問題が潜んでいる。

 なお、この脆弱性問題は2017年6月、Googleによって最初の報告が成された。その後、年末年始にかけて本問題が公知となった。現在も、ほぼ連日のように対策されたOSなどの公開が続いている。

「ネガティブに捉えるべきではない」

 筆者は今回のCPU脆弱性問題をネガティブに捉えるべきではないと考える。大規模な事件、事故の前に、脆弱性が発見されたこと、また速やかな業界全体の対応は称賛に値するものだ。発見したGoogle、2018年1月3日に脆弱性を認めたIntel、同日に対策方針を発表したMicrosoft、Amazonらの機敏さは、素晴らしかった。

 今後、コンピューティング技術は従来の範囲を大きく超え、ロボティクス、AI(人工知能)、自動運転、ブロックチェーン、認識・判断の分野に急激に広まっていくだろう。IoTの名の下、今までの次元とは異なる広い用途でコンピューティングが使われるようになる中、セキュリティや品質がよりクローズアップされることになるが、それとともに不具合、異常の早期発見、それに対する素早い対応が最優先事項になる。不具合を発見した者は価値ある仕事をしたとして評価されるべきであり、また不具合を認め対策する者にも適切な評価を与えねばならない。

 排ガス問題や燃費データ改ざんなどに対する一部自動車業界の対応の遅れにユーザーはいら立ちを感じている。近未来、本格的に自動運転などの新技術を導入するためには、早期に「認め」「対策」する姿勢が、技術の進化とともに必要になるだろう。いずれにしても半導体メーカーだけではユースケースの全てを理解することは不可能であり、業界全体が不具合をゼロにすることを常に目指すとともに、不具合に対しより速い対応ができるように生態変化をせねばならないだろう。

続々、発売される新プロセッサを解剖する。

 プロセッサの用途が広がりつつある現在、続々と新たなx86系プロセッサがリリースされている。図1は筆者が代表を務めるテカナリエで2017〜2018年に入手し、チップ開封などを行って解析を行ったx86系プロセッサの一部である。


図1:テカナリエがチップ開封など詳細解析を行った代表的なx86系プロセッサのパッケージ (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 x86系プロセッサには根強くヘビーユーザー、マニア、ファンがいる。そのため、発売当日は秋葉原などの一部専門店では大々的な発売イベントを展開するケースも多い。ヘビーユーザーは購入後すぐにベンチマークを実行し、性能を測る。テカナリエもヘビーユーザー同様、多くのプロセッサは発売当日に入手している。ただし、プロセッサを動作させることは少なく、即刻、パッケージを開封してチップ取り出し、配線層剥離、観察、測長、コスト算出などを行うことがほとんどである。早いケースだと発売の数時間後にはチップ開封を終わらせていることもある。

 スマートフォンこそArm系プロセッサが主流だが、x86は依然としてサーバやPCなどわれわれの日常に欠かせない基幹システムに多数使われ、コンピューティングの頂点にある。こうした上位コンピューティングプロセッサを開封によって、明るみにすることは、技術面から、もっとも重要だ(観察なき判断はもっての外だ)。

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