量子ドットディスプレイ市場、18年から拡大:採用企業や機種数の増加に期待
量子ドット(QD)ディスプレイの世界市場は、2017年に200万枚へと落ち込むが、2018年は350万枚に回復し、2019年は550万枚へと一気に拡大する予測である。
ディスプレイの色再現性で注目集める
矢野経済研究所は2018年3月、量子ドット(QD)ディスプレイとその関連部材の世界市場を調査し発表した。QDディスプレイ市場は2017年見込みが200万枚となり、前年比58.5%と大きく落ち込んだ。その後は回復し、2019年には550万枚の市場規模が予測されている。
QDディスプレイは、光エネルギーを吸収、変換する機能をもつQDを液晶ディスプレイ(LCD)に応用した製品である。バックライトの消費電力を増やさずに高い色再現性を実現することができる。ただ、QD材料やQDシートなど関連材料が高価であることや、QD粒子にガドミウムが含まれることもあって、QDディスプレイ搭載のTVを量産している企業が、これまでは限定的であった。
こうしたことから、QDディスプレイのメーカー出荷数量は、2016年の342万枚に対して、2017年は200万枚まで落ち込む見込みだ。これに対して2018年からは、先行する韓国と中国のセットメーカーに加えて、複数のセットメーカーやディスプレイメーカーが、QDディスプレイ搭載のTVやモニターの量産を始める予定である。同時に画面サイズの大型化や中級機種のTVにも搭載が見込まれる。これらの状況を踏まえて、2018年は350万枚、2019年には550万枚へと、市場規模は一気に拡大すると予測した。
QDディスプレイ関連部材には、QD粒子とバインダーレジンを配合した溶液である「QD材料」、QD粒子を面状発光体にした「QDシート」、QDシートの上下に貼り合わせてQDの劣化を防止する「QDシート用バリアフィルム」、発光効率や色純度を向上させる「QDカラーフィルター」、QDをエレクトロルミネッセンスとして用いた「QLED」などがある。
今回の調査では、関連部材の中でQD粒子の出荷数量(重量ベース)について予測した。2016年は3.11トンとなったが、2017年は1.9トンに縮小した。しかし、2018年には3.85トンに増え、2019年は7.15トンに拡大すると予測した。
今回の調査は、2017年12月〜2018年3月に実施。QDディスプレイ関連部材メーカー、QDディスプレイメーカー、セットメーカーなどに対し、専門研究員が直接面談や電話/メールによるヒアリングなどを行った。調査結果は「2018年版 量子ドットディスプレイ部材市場の現状と将来展望」としてまとめた。
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