中国への警戒を強める米国、半導体産業を保護する動き:課税などの対抗措置へ(2/2 ページ)
米国で、半導体産業の強化を進める中国に対する警戒が強まっている。米国が懸念しているのは、中国の半導体強化政策そのものではなく、その“進め方”だ。
「技術移転を強要」と主張
トランプ大統領は同日ホワイトハウスでの発言の中で、「中国とは既に対話しており、非常に大きな交渉の最中にある。今後の展開を注視していく」と述べた上で、提案された措置が「間もなく」施行されると付け加えた。
トランプ大統領による今回の措置案は、米通商代表部のRobert Lighthizer氏が2017年8月に、トランプ大統領の指示に従って実施した調査の中で、「技術移転や知的財産、イノベーションに関する中国の政策および慣行は、不当かつ差別的である」と結論付けたことを受けて提示された。
Lighthizer氏は特に、215ページに及ぶ調査報告書の中で、「中国が策定している、合弁事業や海外投資、政策評価、ライセンス手続きなどに関する政策は、米国企業からの技術移転を強要するためのものだ」と結論付けている。
トランプ大統領は、「現在、甚大な知的財産の窃盗が起きている。その被害額は、1年間で数千億米ドル規模に達する」と主張する。
米国政府当局は、中国中央政府とのつながりを持つ中国事業体が、欧米企業の買収を試みていることに対し、警戒を強めている。トランプ大統領とオバマ前大統領はこれまで、中国政府系企業による米国企業や資産の買収案件を阻止してきた。トランプ大統領は2018年3月初めに、BroadcomによるQualcommの買収提案に関して、5G(第5世代移動通信)技術分野における米国の位置付けが弱体化する恐れがあるとの理由から、かつてない手段を講じて阻止している。
米国の半導体メーカーを狙う中国
半導体業界はこれまで、中国の投資対象として狙われてきた。
中国は、国内の半導体業界を強化すべく、今後10年間で1600億米ドルを超える資金を投じるという積極的な計画を発表していることから、世界半導体業界における米国のリーダーシップが脅かされると指摘する声も上がっている。米国の半導体メーカーは長年にわたり、中国政府に対して、技術移転を強要する政策の他にも、知的財産保護に対する無責任な姿勢や、あからさまな窃盗行為などについて非難してきた。
オバマ前大統領は、2017年1月に離任する直前に、米国の半導体業界が直面している脅威として、中国が世界半導体市場における主要プレイヤーになるべく積極的な駆け引きを展開していることを挙げ、強い表現を用いたレポートを発表した。同レポートでは、「中国の政策は特に、イノベーションを弱体化させ、米国の市場シェアを奪い取り、米国の国家安全保障にリスクを生じさせることによって、市場をゆがめている」と結論付けている(関連記事:「半導体市場における中国の脅威、米政府が報告」)
SIAのNeuffer氏は、2018年3月22日に発表した声明の中で、「米国の半導体メーカーが、重要な知的財産を危険にさらすことなく、外国市場において競争力を発揮できるようにする必要がある」と述べる。
一方で同氏は、「中国が国際的な責務を果たし、市場主義に従いさえすれば、世界半導体業界への参加を歓迎するつもりだ」とも述べている。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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