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マイコン大手Infineon Technologiesの埋め込みフラッシュメモリ技術福田昭のストレージ通信(97) STが語る車載用埋め込み不揮発性メモリ(10)(1/2 ページ)

今回は、Infineon Technologiesが開発した埋め込みフラッシュメモリ技術「HS3P(Hot Source Triple Poly)」を取り上げる。HS3Pによるメモリセルトランジスタの動作原理や、どういった分野で実用化されているかを解説する。

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スプリットゲートと浮遊ゲートを組み合わせる

 国際会議「IEDM」の「ショートコース(Short Course)」から、車載用の埋め込み不揮発性メモリに関する講座「Embedded Non Volatile Memories for Automotive Applications」の概要をご紹介している。講演者は半導体ベンダーSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)のAlfonso Maurelli氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前回は、マイコン(マイクロコントローラー)の大手ベンダーであるルネサス エレクトロニクスの埋め込みフラッシュメモリ技術をご紹介した。今回は、同じくマイコン大手ベンダーであるInfineon Technologiesの埋め込みフラッシュメモリ技術をご報告する。

 Infineon Technologies(以下はInfineonと表記)が開発した埋め込みフラッシュメモリ技術を同社は、「HS3P(Hot Source Triple Poly)」と呼んでいる。HS3P技術の特徴は2つ。1つは、スプリットゲート方式であること。もう1つは浮遊ゲート方式であることだ。コンセプトそのものは、SST(Silicon Storage Technology)の「SuperFlash」(関連記事:埋め込みフラッシュIP大手ベンダーSSTのメモリ技術)と似ている。

 HS3P技術によるメモリセルトランジスタの動作は、以下のようになる。プログラム(書き込み)では、メモリゲートにプラスの高電圧を印加し、選択ゲートとビット線にプラスの低い電圧を印加する。すると「SSI(Source Side Injection)」により、ホットエレクトロンが浮遊ゲートに注入される。

 イレーズ(消去)では、メモリゲートにマイナスの高電圧を印加し、基板とソースにプラスの高電圧を印加する。すると「ファウラーノルドハイムトンネリング(FNトンネリング)」によって浮遊ゲートの電荷(電子)が基板に飛び込む。


HS3P技術によるメモリセルトランジスタの動作。左から「イレーズ(消去)」「プログラム(書き込み)」「リード(読み出し)」 出典:STMicroelectronics(クリックで拡大)

 HS3P技術の登場はかなり最近である。2013年に65nm世代で実用化が始まった。生産はシリコンファウンダリーが担当している。40nm世代のHS3Pも開発済みである。


HS3P技術によるメモリセルトランジスタの断面を電子顕微鏡で観察した画像。左が65nm技術、右が40nm技術によるもの 出典:STMicroelectronics(クリックで拡大)

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