古いプロセスで超高密度に集積、進化する中国のインプリ能力:製品分解で探るアジアのトレンド(27)(2/3 ページ)
中国製のドライブレコーダーを分解し、内部のチップを開封すると、中国メーカーがチップを設計する能力、いわゆる“インプリ力”が見えてくる。
基幹プロセッサは中国Allwinner製
図2は、CACAGOOの分解と内部の主要チップの様子である。プロセッサは中国Allwinner製で、プロセッサの電源を最適化し、低消費電力動作などを行う電源ICが中国X-Powerのチップとなっている。また、内部には前述のようにWi-Fiチップが入っており、さらにGPSチップ、警告の音声を出すためのオーディオパワーアンプチップ、スピーカー、さらにSDカードなし(装着可能)でも内部に記録できる4GBのNAND型フラッシュメモリが入っている。
基幹プロセッサ部に中国製チップを用いている一方で、通信やオーディオ、GPSなどの周辺機能チップは台湾製となっている。多くの中国製ドライブレコーダーは、ほぼ同様の構成だ。ちなみに韓国製のドライブレコーダーは、韓国のCoreLogicやTelechipsのプロセッサを使っていることが多い。
図3は、CACAGOOのプロセッサであるAllwinner製チップの開封(左)と、同様にアプリケーション・プロセッサとして多くの製品に使われる欧米(メーカー名は伏す)老舗半導体メーカーのチップ(右)を、同倍率での外観比較の様子である(スペックに類似点が多いため、あえて並べてみた)。
古いプロセスを用いる中国
Allwinnerは、ArmのCPUとGPUを搭載し、かつビデオコントローラーを持つ。チップは55nmというおおよそ8年前の先端プロセスで製造されている。一方、欧米メーカーもAllwinnerと同じCPU(バージョン、コア数も同じ)などを持ち、28nmで製造されている。プロセス世代としては、3世代異なるわけだ(65/55nm世代→45/40nm世代→32/28nm世代)。
レイアウトルールに従えば、世代ごとにチップ面積がおおよそ半分になる。図3の赤色の部分はCPU部(同じバージョンコア、コア数、Inst/Dataメモリの容量も同じ)である。当然ながら28nmの方が小さい。しかしながら、もっと小さくなければ、28nmを使う効果を最大限に発揮できるとは言い難い。数字上は、約4分の1あるいは3分の1になって然るべきなのだが、この比較の限りではCPU部においては、55nm:28nm比が2:1、つまり2分の1程度にしかなっていない。
結論から言ってしまうと、中国のインプリ力(チップを設計する能力)が驚くほど高いから、上記のような面積関係が起こっているのである!!!
55nmという古いプロセスを使い、最新のCPUを最小の面積で設計(配置や機能回路)し、隙間のない合理的なチップを実現しているのだ。最新のプロセスはウエハー価格が高い。一方、古いプロセスは価格が安く、リーク電力が少ないなどの利点もあるため、コストを抑えたい場合や高温でのユースケースには適していることも多い。
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