古いプロセスで超高密度に集積、進化する中国のインプリ能力:製品分解で探るアジアのトレンド(27)(3/3 ページ)
中国製のドライブレコーダーを分解し、内部のチップを開封すると、中国メーカーがチップを設計する能力、いわゆる“インプリ力”が見えてくる。
分解で見えた中国メーカーの“インプリ力”
Allwinnerチップは図3のように、28nmのプロセッサに比べてチップ面積も決して大きいわけではないのに、コスト面は極めて有利である。さらに、性能面でも、設計において面積の最小化を徹底して行っている。弊社で顕微鏡観察をした限り、隙間のない徹底した高効率設計がなされている。筆者は半導体メーカーに勤務していた時代に100チップを超えるインプリ設計を行っており、ほとんどの回路を顕微鏡で読み取ることができる。そうした経験からも、中国チップのインプリ力の高さは常に注目して観察している。
中国の設計力の高さは、この数年製品ごとに進化し、驚きのレベルに達している(本当は、ここで日本のスカスカな空地だらけの実装率の低いチップを数例掲載したいところだが、それはまたの機会にしよう)。
図4は、CACAGOOで使われたAllwinnerの、他のチップを採用している日本製品の事例である。任天堂が2016年、2017年におのおの発売した「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ(以下、クラシックミニ)」には、Allwinnerのプロセッサが採用されている。これ以外にも、われわれが日常的に使っている多くの製品に、中国チップが入り込んでいる。
クラシックミニで採用された「Allwinner R16」もまた、まったく隙間のない、極めて集積密度の高いインプリが行われているチップである。最新の設計ツールを存分に使い、競うようにしてインプリ力を高め、チップの性能面、コスト面を洗練させている中国の姿は、チップを開封すればよく分かる。
2010年前後の中国チップと現在のチップとでは、明らかに“チップの顔つき”が異なっている。今後もチップの開封および観察を徹底して継続し、さらなる進化を見ていく予定だ。
なお、日本メーカーにも極めて高いインプリ力を持つメーカーもある。しかし、今や中国のいくつかのメーカーは、日本メーカーをインプリ力で凌ぎつつあることは、間違いないだろう。先述した日本製スカスカチップの例は、日本のすさまじいインプリ例と合わせて、「この1〜2年の日本チップ VS. 中国チップ」という対比で、2018年夏には報告したいと考えている。ぜひ、楽しみにしていてほしい。
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