女性の活用と、国家の緩やかな死:世界を「数字」で回してみよう(48) 働き方改革(7)(1/10 ページ)
今回は、「働き方改革」の中でも最難関の1つと思われる「女性活用」についてです。なぜ、このテーマが難しいのか――。それは、「女性活用」は、運用を間違えれば、国家の維持(つまりは人口)にも関わる事態となってくるからです。
「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」として政府が進めようとしている「働き方改革」。しかし、第一線で働く現役世代にとっては、違和感や矛盾、意見が山ほどあるテーマではないでしょうか。今回は、なかなか本音では語りにくいこのテーマを、いつものごとく、計算とシミュレーションを使い倒して検証します。⇒連載バックナンバーはこちらから
後輩からレビューを受けた時のことです。
後輩:「江端さんは女性の労働問題(「女性活用」)を、男性を中心とした作られた企業や組織にあると見なしているようですね」
と、後輩は前回のコラムの原稿を見ながら言いました。
江端:「そうだけど?」
後輩:「もちろん、それは間違っていませんが、その観点だけ見ていると、いつまで立っても解決方法は見えてきませんよ」
江端:「と、言うと?」
後輩:「例えば、戦後の日本は、夫を戦争で失った妻や子どもを守ってきたという歴史があるのですよ。『母性保護をしなければならない』という必死の施策や体制があったことを含めて考えないと、その辺の『社会が悪い、政治が悪い』と叫んでいるだけの、頭の悪い記事と差別化できませんよ」
後輩の話を聞きながら、私はイスラム教の「一夫多妻」のことを思い出していました。
イスラム教は、その教義に、布教のための戦争(ジハード(聖戦))を含んでおり、それ故、戦死者とその戦死によって残された妻(寡婦)やその子どもの養育も、ジハードと一緒に考えておく必要がありました。
「男1人に、女性4人まで妻帯がO.K.」とされているのは、男性優位主義のハーレムの「権利」 ―― ではなく、「戦死していない男であるお前は、4人まではきっちり戦死者の寡婦と子どもを養育しろよ」という「義務」から発生していることは、意外に知られていません。
今回調べてみて分かったのですが、「女性活用」なるものは、今回の「働き方改革」が初出ではありません。過去にも、さまざまな取り組みがなされています。
ところが、現在がその過去の積み重ねの結果であることや、そして、その取り組みは、今後どうなっていくか、という考察や検討は少ないです。特に、定量的な評価(数値データや計算)については、絶無といえる状態で ―― 今回は、その方針を立ち上げるところまでで、酷く時間がかかりました。
一番の要因は、「私が女性ではない」ということです。
今回のコラムは、データやファクト(事実)と計算だけで、「働く女性」の内面に迫れるか、という(私にとっては)大きな試みとなりました。
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