女性の活用と、国家の緩やかな死:世界を「数字」で回してみよう(48) 働き方改革(7)(2/10 ページ)
今回は、「働き方改革」の中でも最難関の1つと思われる「女性活用」についてです。なぜ、このテーマが難しいのか――。それは、「女性活用」は、運用を間違えれば、国家の維持(つまりは人口)にも関わる事態となってくるからです。
「女性活用」の歴史をさかのぼる
こんにちは、江端智一です。
今回は、政府が主導する「働き方改革」の項目の1つである、「女性・若者人材育成」の特に「女性活用」について考えていきたいと思います。
政府が、「働き方改革実行計画」の「女性・若者人材育成」で掲げている課題(私が乱暴に理解した範囲では)は以下の通りです。
現在、政府は「女性活用」を掲げて、いろいろな施策を上げて ―― そして、その多くは、あまりうまくいっていない ―― ように見えます。
で、今回は、(前述の後輩のアドバイスも受けて)この、女性の働き方が、どのように変化してきたか or させられてきたかを、明治維新までさかのぼって調べてみました。
さらに、「女性の働き方」において最大の「問題」となり得る「子ども」(育児)というものが、何であり、どういう意味があるのかを、(忖度も愛情もない冷静な)エンジニア視点から考えてみました。
そして、「女性の働き方」という観点で見たところ、「キャリア」という言葉の意味が、本来の「キャリア」の意味とは違っているらしいことを説明したいと思います。
最後に、政府の主導する「女性の働き方改革」を、コンピュータでシミュレーションしてみたところ、どうやっても失敗してしまうという結果を数値で示したいと思います。
まず、明治維新から現在までを、太平洋戦争(1941年(昭和16年)〜1945年)の前後に分けて、調べてみました。
明治維新の新時代を作ったのは、「るろうに剣心」の緋村剣心 ―― などではなく、女性の労働力でした。これは、当時の大蔵大臣である松方正義が「日本の軍鑑は総て生糸を以て購入するものなれば、(後略)」と発言していたことからも分かるように、わが国は、女性工員が生産した生糸を輸出して、軍艦や重工業製品を購入していたのです。
しかし、米国ウォール街の株の大暴落から始まった世界恐慌が日本にも波及して「日本恐慌」となり、この結果、列強が弱小国を「喰いもの」にして生き残る「帝国主義」がさらに加速していきました。
わが国も「喰われる側」ではなく「喰う側」になるために、急激な軍備化が図られました。そしてここでも女性が活躍が国家を支えることになります。女性が、超高精度な制御や、安全性や耐久性を要求される、武器の生産に関わり、驚異的な高品質の兵器を増産していきました。
そして、太平洋戦争時においては、12歳以上の少女たちまでをも(そして、未婚女性は問答無用で)、兵器製造に投入し、運用していた事実から、「性別による生産能力の差」という考え方が全くナンセンスであるということを ―― その当時の国民は理解していたのです(多分、現代の私たち以上に、深く分かっていたはずです)。
ところが、皮肉なことに、この太平洋戦争こそが、このパラダイムを一変させるきっかけとなったのです。
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