中国が新たに半導体ファンド立ち上げへ、5兆円規模か:米との貿易摩擦で投資が加速
中国政府が支援する投資会社が、国内の半導体産業の強化に向けて第2回資金調達ファンドを近く開設するという。調達額は、当初の予定を大きく上回るとみられる。
中国政府が支援する投資会社が、国内の半導体産業の強化に向けて第2回資金調達ファンドを近く開設するという。調達額は、当初の予定を大きく上回る、470億米ドル(約5兆円)に上るともみられている。
Wall Street Journalは、匿名筋からの情報として、「中国国家IC産業投資基金(CICIIF:China Integrated Circuit Industry Investment Fund)は、特に最先端プロセッサとGPUの設計および製造能力を国として高めることに同ファンドで調達した資金を充てる考えだ」と報じた。同ファンドの規模は、当初は190億〜320億米ドル(約2兆〜3.5兆円)と予想されると報じられていたが、中国と米国間の貿易摩擦の激化を受けて増加される可能性があるという。
中国と米国はそれぞれ、数十億米ドル相当の製品に関税を課していて、両国間で貿易摩擦が激化している。こうした状況を受けて、中国の半導体産業に対する政府の資金提供は目立って増加している。米国は、「中国政府の半導体産業に対する支援は反競争的行為だ」と主張している。
中国政府は近年、中国の大規模エレクトロニクス市場への供給を支援するために、国内の半導体産業を創出する取り組みを強化してきたが、今後10年間で1610億米ドルを投じて、その取り組みをさらに進める計画だという。中国は現在、毎年1000億米ドル以上の半導体を輸入している。
Wall Street Journalの報道によると、CICIIFは近く、2014年に開設され約220億米ドルの資金調達を行ったのと同様のファンドを立ち上げる計画だという。
米国の市場調査会社であるInternational Business Strategies(IBS)のCEO(最高経営責任者)を務めるHandel Jones氏は、「米国との最近の貿易摩擦によって、中国では国内の半導体産業を緊急に強化する必要性が高まっている」と述べている。米国は2018年4月、中国の通信事業者であるZTEに対する輸出禁止措置を講じた。これにより、半導体メーカーをはじめとする米国企業は、Qualcommなど米国の半導体ベンダーの主要顧客であるZTEへのデバイスの販売ができなくなった。
Jones氏は、EE Timesに対して、「中国はより強固な設計とIP(Intellectual Property)エコシステムの構築に向けて、設計能力を国内に集約する必要に迫られている」と語った。ただし、同氏によると、中国のファブレス半導体ベンダーであるHiSiliconのアプリケーションプロセッサ「Kirin」は、既に世界市場での競争力を持っているという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 中国、半導体産業に新たに3兆円を投資
中国が、半導体産業に新たに2000億人民元(約3.3兆円)の資金を投じるという。専門家の中には、「中国が技術の後れを取り戻すには、相当の投資が必要になるだろう」との声もある。 - 中国の半導体政策は「無謀」、各国の警戒も強まる
半導体産業の強化に注力する中国だが、目標の到達には計画以上の時間が必要なようだ。資金力をものにM&Aを進めようとする姿勢に対し、警戒を強める国もある。【訂正】 - 中国、海外半導体企業の“買いあさり作戦”を変更?
中国は、半導体産業を強化すべく、既に技術を持っている海外企業を買収しようとしてきた。だが、特に米国で、そうした動きに対する警戒が強まる中、中国は海外企業の買収から、国内で全てまかなうという方向にシフトし始めているようだ。 - 半導体市場における中国の脅威、米政府が報告
半導体産業における中国の脅威について、米政府が報告書をまとめた。中国政府の半導体強化政策を批判しているわけではなく、中国企業による米国半導体企業の買収が、米国の安全を脅かすものになり得る場合もあると指摘し、中国メーカーが市場をゆがめるようなM&A政策を採った場合は、これを阻止するよう提言している。 - 広がり続ける中国半導体の裾野
今回は、中国から続々と生まれている機能複合型のワイヤレススピーカーの内部を観察していく。搭載されているチップは、当然のように全て中国メーカー製だった――。 - 2017年の半導体設備投資費、上位11社は10億ドル超
IC Insightsの予測によると、2017年における半導体企業の設備投資額は732億米ドルで、上位11社はそれぞれ10億米ドルを超える投資を行うという。中でもIntel、GLOBALFOUNDRIES、STMicroelectronicsの増額率は、それぞれ前年比で25%増、33%増、73%増と、大幅な増額を見込んでいる。