もはや一国でモノづくりは不可能、ZTE措置が突きつける現実:製品分解で探るアジアの新トレンド(28)(2/4 ページ)
米国がZTEに対し、向こう7年間にわたり米国企業の製品を使えないという厳しい措置を決断した。その影響は既に出始めている。
世界中にサプライチェーンを持つZTE
ZTEは端末や基地局を作るために、電子部品や半導体といったハードウェアからソフトウェアまで、日米欧、韓国、台湾、自国中国の多数のサプライヤーをネットワークに持っている。製品の流れが止まってしまうと、多くのサプライチェーンに影響が及ぶことは、想像に難くない。既に多くの部品メーカー、半導体メーカーにおいて、価格見直しや構造改革(人員削減を含む)といった対策が始まっている。
世界のトッププレーヤーの1社に急ブレーキがかかるというのは、こういうことなのだ。この影響はジワジワと広がりを見せていくのではないだろうか。
今回は、渦中にあるZTEの2017年を代表するスマートフォンの分解を通じて、中身の半導体のサプライチェーン(比率)を見てみたい。図1は、ZTEが2017年に世界各国で発売した「Nubia Z17 mini」の様子である。弊社ではこの他にも多くのZTE製スマートフォンを分解しているが、今回は本機種を取り上げた。
図1は、スマートフォンの梱包箱、外観および本体裏側のカバー取り外し、さらにリチウムイオン電池を取り外した様子である。電池の下にはディスプレイがあり、ディスプレイにはタッチパネルが重なっている。
その付け根にタッチパネルコントローラーチップが備わっている。本機で採用されるタッチコントローラーは米Synapticsのチップだ。Synapticsはタッチコントローラーで高い実績を持つ会社で、2014年にはルネサスエスピードライバを買収してLCD(液晶ディスプレイ)制御にも参入、さらに2017年には米Conexant(旧Rockwell Semiconductor Systems)を買収し、マイクロフォンアレイやオーディオなどの分野にも市場を広げている会社である。
図2は、Nubia Z17 miniのカメラおよびメインの基板の様子である。カメラは、高度な映像を撮影できるデュアルカメラが採用されている。
カメラのレンズを取り外すと下部にCMOSセンサー(画像素子)が現れる。顕微鏡で拡大するとチップ上に搭載されるメーカー名や製品型名を確認することができる。本機で採用されるCMOSセンサーは、米OmniVision製センサーであることが判明した。一方、基板側にはたくさんの半導体チップが搭載されている。図2の面は、主に通信用のパワーアンプとシステムやプロセッサの電池寿命を延ばすための電源制御部で構成されている。
パワーアンプは米国勢が圧倒的に強い。Skyworks Solutions(以下、Skyworks)、Qorvo、Broadcomなど米国メーカーの製品が多くのスマートフォンに使われている。Nubia Z17 miniのパワーアンプは、全てSkyworks製であった。
「全て」という表現を使うのには、きちんと理由がある。通信には多くの方式があり、おのおのが扱う周波数が異なるために、1つのパワーアンプで全てを網羅できないという構造的特徴があるからだ。
そのため、2G(第2世代移動通信)方式に対応したパワーアンプ、3G(第3世代移動通信)方式、LTE(さらに周波数別)にそれぞれ対応するパワーアンプを搭載しなくてはならない。世界のさまざまな地域、方式に対応するスマートフォンにするためだ。
日本でも、LTEがカバーしない領域では3Gサービスに自動的に切り替わるが、それは、あらかじめLTE用と3G用、それぞれに対応したパワーアンプを搭載しているからである。Nubia Z17 miniでは、2GからLTEまでを網羅するパワーアンプの全てを、Skyworksのチップで賄っている。
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