7nmで独自ASIC……GMOが半導体開発に乗り出す理由:投資額は「100億に近い数十億円」(2/2 ページ)
GMOインターネットは2018年6月5日、東京都内で記者会見を開催し、7nmプロセスを用いて独自開発したマイニング専用ASICを搭載するマイニングマシン「GMO miner B2」を紹介した。
GMO 72bを100個超集積するGMO miner B2
GMO miner B2は、GMO 72bを多数搭載するハイパワー・高集積・低ランニングコストがウリのマイニングマシン。1台のGMO miner B2は、3枚のボードを搭載しており、1枚のボードにはGMO 72bが38個搭載される予定で、1台あたり合計で114個のGMO 72bを集積する見込みだ。
これにより、競合他社の現行機種に勝る最大24Tハッシュ/秒(H/s)のハッシュパワーを提供しつつ、設置スペースは約半分となった。また、GMO miner B2は最大32台のデイジーチェーンに対応するため、ネットワーク構築コストが最大で55分の1に圧縮できることをアピールする。
消費電力は1台あたり1950Wで、1TH/sあたり消費電力に換算すると81W。この数値は、競合他社製品と比較して、最大で20%減になるという。また、オンラインアップデートやシステム監視用のAPIが提供され、昨今リスクが表面化してきたマイニングマシンの盗難に対するソリューションとして稼働オンライン検知機能を備えている。なお、同マシン用の入力電圧100〜240V対応電源ユニットも同時に販売される。
同社は、2018年6月6日に購入希望者に対して説明会を開催し、同日より販売を開始する。初回出荷は同年10月末から始まる予定だ。他のマイニングマシンと同じく、GMO miner B2でも毎月価格が変動するビジネスモデルを採用しており、販売初月となる同年6月の価格は1999米ドル(電源ユニット込)。支払いはビットコイン、ビットコインキャッシュ、米ドルからの選択となる。
2018年6月6日の購入希望者説明会について「もう既に説明会に全世界から700人を超える登録がある」(熊谷氏)として、しばらくは抽選販売となる見込み。また、ASIC単体や搭載ボードの販売は今後の検討課題だとした。
同社は自社マイニングを仮想通貨事業の一環としており、マイニングファームも自社で保有している。よって、今回製造するマイニングマシンも一部機材を自社ファームへ回し稼働させる方針だ。これにより、マシンの在庫が発生した場合でも自社利用によりマイニング利益が発生するため、「在庫リスクがないという点で、非常に優れたビジネスだと考えている」(熊谷氏)との認識を示す。
マイニング用ASICを独自開発した動機について記者から質問を受けると、熊谷氏は「半導体開発に携わりたかったという面がある」と前置きの回答をしつつも、「ゴールドラッシュでは、ジーンズやスコップを販売した会社がかなり儲けたという歴史的事実がある。GMOでは(仮想通貨事業によって)金自体も掘るし、スコップも作って売る」として、ビジネスを見据えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 堅調なTSMC、5nmのリスク生産は19年Q1にも開始
TSMCは、半導体メーカーのファブライト化や、HPC(High Performance Computing)向けチップの需要の高まりにより、堅調な成長を続けている。7nmや5nmプロセスの開発も順調だとする。 - 7nmプロセスの開発が加速、EUVの導入も現実的に
ファウンドリー各社が7nmプロセスの開発を加速している。さらに、半導体製造装置メーカーのASMLもEUV(極端紫外線)リソグラフィシステムの開発を順調に進めている。 - Qualcomm、7nmチップ発注先をTSMCに切り替えか
韓国のET Newsによると、Qualcommは7nmのSnapdragon SoC(System on Chip)の発注先をTSMCに切り替える。この報道が正しければ、Samsungの2018年のファウンドリ事業は多大な痛手を被る。7nmのSnapdragon SoCは、2017年末か2018年早々に発表されることが予想される。 - TSMC、7nm/EUVの開発状況をアップデート
TSMCは2017年9月、米国で開催されたイベントで7nmプロセス技術やEUV(極端紫外線)リソグラフィの開発状況などを説明した。 - Qualcomm、5G対応SnapdragonにSamsungの7nm EUVを適用
Qualcommは2018年2月、同社の5G(第5世代移動通信)チップセット「Snapdragon」に、Samsung ElectronicsのEUV(極端紫外線)リソグラフィを導入した7nm LPP(Low Power Plus)プロセス技術を適用することを発表した。 - 非接触心拍センサーから7nmプロセスまで、VLSIの今
「Symposium on VLSI Technology」と「Symposium on VLSI Circuits」が2018年も米国ハワイ州ホノルルで開催される。本稿では、両会議の概要と注目論文を紹介する。