Qualcomm、7nmチップ発注先をTSMCに切り替えか:Samsungには大きな損失
韓国のET Newsによると、Qualcommは7nmのSnapdragon SoC(System on Chip)の発注先をTSMCに切り替える。この報道が正しければ、Samsungの2018年のファウンドリ事業は多大な痛手を被る。7nmのSnapdragon SoCは、2017年末か2018年早々に発表されることが予想される。
Samsungの7nmノード開発遅延が一因
韓国のIT技術サイトであるET Newsは、「10nmチップの製造はSamsung Electronicsに委ねたが、Qualcommは7nmを適用した『Snapdragon』SoC(System on Chip)の発注先についてはTSMCに切り替えるつもりだ」と報じた。この報道が正しければ、TSMCにとっては大きな追い風となるが、Samsungは2018年のファウンドリー(半導体受託製造)事業に多大な痛手を受けることになる。
Qualcommの広報は、この報道を「うわさにすぎない」としてコメントを拒否した。SamsungとTSMCもコメントに応じていない。
ET Newsは、「Qualcommは2016年半ばにTSMCの製造装置を用い、7nmのSnapdragon SoCの製造に着手している」と伝えている。7nmのSnapdragon SoCは、2017年9月にTSMCが最初のテストウエハーを製造し、パッケージデザインと検証を経て、2017年末か2018年早々に発表されることが予想される。
Qualcommは2017年1月に開催された「CES 2017」で、Samsungの10nmプロセスを適用した「Snapdragon 835」を発表した。ET Newsの記事は、「Snapdragon 835は、Samsungのファウンドリー事業の40%を占め、売上高は約17億8000万米ドルに上る」と伝えている。
発注先変更の背景
記事によると、「Qualcommが7nmチップの発注先をTSMCに変更した背景には、2つの理由がある」という。2つの理由とは、Samsungの7nmノードの開発が遅れていることと、SamsungにはTSMCがAppleの「iPhone 7」向けSoCに適用している積層技術がないことだ。TSMCが7nmプロセス設計キットを2016年末にリリースしているのに対し、Samusungが7nmのプロセス開発ツール(PDK)のβ版をリリースするのは2017年7月の予定である。
Samsungは2016年末に、「7nmではEUV(極端紫外線)リソグラフィを導入する」と発表した。しかし、GLOBALFOUNDRIESなどの情報によると、同技術は商用利用が限られているため、2019年までは実用化されない見通しだという。Samsungは最近になって、8nmノードに液浸ステッパーを導入する計画を発表した。
米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでアナリストを務めるMike Demler氏は、「TSMCはSamusungより先に7nmノードのリスク生産を進めている。Samsungは7nmのEUVリソグラフィ技術の開発に、当初の予定よりも時間がかかっている」と述べている。
さらに、TSMCは、同社が開発したパッケージング技術である「InFO(Integrated Fan Out)」をAppleのスマートフォン向けSoCに適用している。InFO は、ウエハーレベルのファンアウトパッケージング技術「FOWLP(Fan Out Wafer Level Packaging)」の一種である。一方、「Samsungは、同様の技術の開発に取り組んでいるが、実用化までに少なくとも1年はかかると予想される」と記事は伝えている。
記事は、「Samsungは、8nmプロセスでスマートフォン向けの次世代SoCを製造する計画だ。ただし、同社のハイエンドスマートフォン、タブレット「Galaxy Note」シリーズ向けSoCは、7nmノードで製造すると予想される」と伝えている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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