複数人を同時測定できる24GHzバイタルセンサー:開発キットとして発売(2/2 ページ)
アナログ・デバイセズとサクラテックは2018年6月6日、24GHzレーダーを使用した非接触型バイタルセンサーシステムを共同開発したと発表した。同システムは、生体情報データを活用した先進アルゴリズム開発、研究用途などに向けた開発用プラットフォームとして販売する。
実績のあるチップセットを搭載
開発したシステムは、キーデバイスとして、Analog Devices製の24GHzレーダー専用チップセット(周波数シンセサイザー「ADF4159」、送信IC「ADF5901」、アナログフロントエンドIC「ADAR7251」、受信MMIC「ADF5904」)を搭載。このチップセットは、アンテナ部からデジタル信号処理部までの全ての処理を小面積で行える特長を持ち、自動車市場などで評価、採用が進んでいるという。レーダー関連機器の設計開発を手掛けるサクラテックが、同チップセットを活用し、104×76×6mmの小型、薄型のレーダーモジュールに仕上げた。レーダーモジュールは、生体情報検出用ソフトウェアの処理用FPGAなども搭載しながら「USB給電で動作する」という低消費電力での動作を実現している。
このレーダーモジュールと、サクラテックが開発した生体情報検知アルゴリズムを組み合わせて非接触型バイタルセンサーシステムを開発した。同アルゴリズムを用いた場合の検知精度は、「(医療用途で使用される)心電計の9割程度の精度で心拍、呼吸数を取得できる」(サクラテック)とする。同時測定は4人までとなっているが、「アルゴリズムを改良すれば、最大10人ぐらいまでは同時測定できるセンサーシステムを実現できるだろう」(サクラテック)
病院や介護施設、公衆浴場、トイレなどでのモニタリング用途を想定
アナログ・デバイセズとサクラテックの両社は、開発したシステムを「生体情報などのデータを活用した先進アルゴリズムの開発、研究現場に向けた“開発プラットフォーム”として販売する」という。同システムは、取得したデータをクラウド環境にアップロードする機能を備える他、データ分析用クラウド環境の提供も行う。「まずは、機械学習などを使用する先進アルゴリズムを開発するための、データ取得用センサーとして活用してもらいたい」(両社)
両社では最終的な使用用途として、「衣服や布団越しでも心拍、呼吸を取得できるため、病院や介護施設のベッドのモニタリングに向く。またプライバシーに配慮が必要なカメラを必要とせず、公衆浴場やトイレの監視などでも活用できる。またカメラが苦手な暗闇や降雪などの状況でも人を検知できるので、監視カメラの補助的にレーダーシステムの活用が見込まれる」とする。加えて、「開発プラットフォームを活用して、さまざまなアルゴリズムを開発されれば、用途はさらに広がるだろう」と期待を寄せる。
開発した非接触型バイタルセンサーシステムの価格は、レーダーモジュールと生体情報検出用ソフトウェアを含む評価キット(名称:miRadar8 EV-2)が75万円(税別)。レーダーモジュール単体(名称:miRadar8)の量産時価格は8万円(10台単位の販売、税別/ソフトウェアライセンス料は別途)となる。なお、データ分析用クラウドサービスの利用料金は個別相談としている。
【訂正】※掲載当初より、レーザーモジュール単体価格表記を量産時価格に訂正しています(2018年6月11日午前10時20分)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- DC〜100GHz超に対応、ADIのシグナルチェーン
Analog Devices(ADI)は、「マイクロウェーブ展 2017」において、RFシステム全体をカバーする多様なRF製品群をベースに、パートナー企業との連携によるシステムソリューションを具体的な形でデモ展示した。 - ミリ波バイタルセンサー、非接触で心拍数を計測
京都大学のCenter of Innovation(COI)とパナソニックは、離れた場所から心拍数と心拍間隔を計測できる、小型で高感度の「非接触ミリ波バイタルセンサー」を共同開発した。【訂正あり】 - 電池駆動の電子レンジを実現するRFデバイス提案
NXP Semiconductorsは、「マイクロウェーブ展 2017」で、同社のRFモジュールを用いた電池駆動式電子レンジの提案を実施した。 - ドライアイ予防に効果? まばたき検知センサー
ソシオネクストは、慶應義塾大学と共同で、24GHz電波センサーモジュールを使った非接触型のまばたき検知センサーシステム(試作)を開発した。ディスプレイを凝視することなどで起こるドライアイの予防システムや、自動車の居眠り運転防止装置などへの応用を目指すという。 - 低コストの79GHz帯ドップラーモジュール
ヨコオは、移動体の速度や物体有無検知用レーダー/センサー用にディスクリートデバイスのみで構成した低コストの79GHz帯ドップラーモジュールを開発したと発表した。 - 自社開発のチップで大規模MIMOの普及加速へ
「MWC(Mobile World Congress) 2018」に出展したNokia(ノキア)は、46件にも上るデモを巨大なブースで披露した。中でも来場者からの注目度が高かったのが、モバイルネットワーク向けとしてはノキアが初めて自社設計したチップセットや、5G(第5世代移動通信)で重要視されているネットワークスライシングなどのデモだ。