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インタビュー

中国勢の台頭と有機ELの行方、ディスプレイ業界の未来ディスプレイ業界を望む 2018(1)(2/3 ページ)

EE Times Japanでは、ディスプレイ業界の現状を振り返り将来を見通すべく、市場調査会社IHS Markitのアナリストにインタビューを行い、複数回にわたってその内容をお届けしている。第1回は、ディスプレイ産業領域を包括的に担当する同社シニアディレクターのDavid Hsieh氏より、大型/中小型液晶と有機ELの現状と未来を聞く。

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大型/中小型液晶の現状と未来

EETJ 液晶ディスプレイ市場は面積ベースで需要が成長しているとのことですが、どの程度の成長が見込まれますか。

Hsieh氏 面積ベースによる年間の需要成長率は、5%程度を予測している。テレビの価格下落によって消費者の購買意欲が促進されたことや、価格帯に対応するテレビサイズが上昇しているためだ。よって、予測よりも実際にはもっと成長する可能性もある。

 年末商戦で、テレビの価格がさらに下落する傾向にある。2018年の年末では、65型テレビで600〜1000米ドル程度の価格帯に、一部ローエンドモデルでは499米ドルをターゲットとして値付けされるかもしれない。

EETJ 旧世代工場の閉鎖に関して、どの世代から閉鎖の対象になるのでしょうか。

Hsieh氏 第5〜6世代の工場が対象になってくる。これら世代の工場ではコストメリットがあまりなく、償却が既に終わっているためだ。中国メーカーは政府からの補助金があるので償却コストが売却額を上回っていても問題ないが、韓国と台湾メーカーは償却コストがなかったとしても苦しい戦いを強いられる。

EETJ 第5〜6世代工場は、グローバル生産キャパシティーでどの程度の割合を占めていますか。

Hsieh氏 おおよそ3割だ。ディスプレイ生産の中心は現在、第7.5世代、第8.5世代の工場が担っている。第5〜6世代工場は車載製品向けに転換されつつあるが、低温ポリシリコン(LTPS)の採用が増えてきているスマートフォン向けには転用できない。これら旧世代工場で生産できる液晶パネルはアモルファスシリコン(a−Si)であり、LTPS生産ラインへのスイッチは難しい。旧世代工場の生き残りは厳しいだろう。


液晶ディスプレイ工場の世代別生産能力比率の推移(クリックで拡大)IHS MarkitのデータよりEE Times Japanが作成

EETJ 中小型の液晶ディスプレイに注目すると、今後の技術、ビジネストレンドはどのように進みますか。

Hsieh氏 a−Siはこれからますますシュリンクし、解像度や狭額縁化にメリットのあるLTPSに移行するだろう。ディスプレイの大需要先であるiPhoneについても、2018年モデルでは大幅に液晶ディスプレイモデルの生産を増やすとされ、ジャパンディスプレイは2018年モデルiPhoneのデザインウィンを期待している。しかし、2019年モデル以降のiPhoneでは有機ELディスプレイモデルの生産を増やすだろう。

 AppleやSamsung以外のスマートフォンメーカー、例えばOPPOやVivoといった中国メーカーなども有機ELの採用に対して興味を示している。しかし、やはりコストが問題だ。また、有機ELのメリットであったノッチカットなどディスプレイデザインの優位性も、液晶メーカーの開発努力によって薄れつつある。2018年より市場に投入される液晶ディスプレイでは、フルスクリーンでノッチカットにも対応する。

 有機ELのコスト低減が十分に進めば、LTPSがシュリンクしていく可能性は十分にある。この動きは、早ければ2019年から始まるだろう。有機ELのコスト低減でカギとなるプレーヤーは中国メーカーだ。現在、液晶と有機ELのコスト差は約2倍となっているが、液晶に対して有機ELが20〜30%程度の価格差まで持ち込めば一気に有機ELの採用が進むとみている。


スマートフォン市場における有機ELパネルと液晶パネル出荷比率の推移(クリックで拡大)IHS MarkitのデータよりEE Times Japanが作成

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