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合理的な行動が待機児童問題を招く? 現代社会を映す負のループ世界を「数字」で回してみよう(50) 働き方改革(9)(6/8 ページ)

今回のテーマは「子育て」、とりわけ、働き方と深く関わってくる、保育園の待機児童問題です。少し前に取り上げた「女性の活躍」と切っても切り離せず、かつ深刻を極めている問題なのですが、政府の対応がうまくいっておらず、また、実は“当事者意識”を持ちにくい問題となっていることが、数字から見えてきました。

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「戦略的撤退」なのか

 政府の「働き方改革」では、「結婚や出産育児は忘れて、労働に従事しろ」でもなく、「労働を蔑ろにしていいから、まずは結婚や出産育児に専念しろ」でもなく、「その両方をなんとかしろ」と言っています。

 もっとも、「そのために必要な環境は、国家がなんとかするから」とも言っている(ですよね?)のですが、その「国家がなんとかする」の方が、うまく機能しているようには見えません。「日本死ね」と言いたくなるのは、当たり前です。

 ならば、いっそのこと少子化は不可避として、日本の行政システムの縮退(シュリンク)させることを真面目に検討した方がよいのではないかと思ってしまうのです。いわば、戦略的「撤退」ならぬ、戦略的「縮退」です。

 その一方で、私は、『もしかしたら、政府には、このような日本国というシステムの縮退戦略を取らずに、現存システムを維持したままで「勝つシナリオ」を持っているのかもしれない』 ―― と、想定してみました。

 今回は、このテーゼに沿って、「子どもには金を生み出す資産的価値がある」という仮説を立てて、数字でこの検証を試みてみました。

 以前、私は、子どもの育成コストについて、3368万円/人(関連記事:「儲からない人工知能 〜AIの費用対効果の“落とし穴”)という計算結果を出しましたが、今回はこの結果を用いて、家庭と国家のそれぞれの、子どもの資産的価値を算出してみることにしました。

 以下の表は、子どもが増えることで、家庭で使えるお金の金額がどのようになっていくかを、具体的な数字で示したものです。

 はっきりしていることは、子どもの数が増えるほどに、生活は苦しくなるということです。

 さて、今度は、これを国家の税収から見てみますと次のようになります。

 この計算は、極めて単純なもので、国家による子ども一人当たりの投資金額(1368万円)に対する平均生涯税収の比率を求めたものです。育成投資に対して、1.56倍のリターンが返ってくる(のが本当であるとすれば)、子どもは優良な投資物件です(少なくとも銀行に金を預けるよりは、ずっといい)。

 もっとも、この投資を回収できるのは国家であって、私たちの家庭ではありません

 私たちは、子どもというバイバスを通じて、国家によって、なけなしの家計から税金を巻き挙げられているという、悪意に満ちた見方もできます(もちろん、子どもの存在によって、私たちが幸せになって、国家も潤うのであれば、Win-Winな関係とも言えますが)。

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