電動飛行機の実現へ、JAXAらがコンソーシアムを発足:航空産業と電機産業の協業を推進(1/2 ページ)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、航空機の電動化技術を開発し、航空産業と電機産業の連携を促進することを目的とした「航空機電動化(ECLAIR:エクレア)コンソーシアム」を設立した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2018年7月2日、航空機の電動化技術を開発し、航空産業と電機産業の連携を促進することを目的とした「航空機電動化(ECLAIR:エクレア)コンソーシアム*)」を設立したと発表した。
*)英文名称:Electrification ChaLlenge for AIRcraft (ECLAIR) Consortium
また、JAXAは2018年7月9日に同コンソーシアム設立に関する説明会を開催し、現在の航空産業が置かれている状況と、航空機電動化を推進する目的や内容を説明した。
倍増する航空機の機数、CO2の大幅削減は急務
JAXA航空技術部門 次世代航空イノベーションハブ ハブマネージャの西沢啓氏は、航空機電動化の必要性について、「(ジェットエンジンなど)従来技術や運行方法、インフラ等の改善などの延長では、ますます強まるCO2排出規制に対応ができない」ためと説明する。
航空輸送の需要は増加の一途をたどっており、今後20年で航空機の機数は2倍に増加すると予測されている。よって、「何も対策しなければCO2排出も2倍」(西沢氏)になるため、ICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)を筆頭に航空産業ではCO2排出に対する削減枠組みを設定している。
IATAの目標を例に挙げると、2050年までに2005年時点のCO2排出量から50%削減するとしているが、この目標の達成には「バイオ燃料の導入」や「推進系の電動化」など、これまでにはなかった非連続な技術革新が必要だとする。
航空機電動化に関する現在の国際動向は、「2000年以降のリチウムイオン電池技術や永久磁石同期電動機などのモーター技術の飛躍的向上が貢献し、出力200kWクラスの小型機であれば推進系の電動化が可能になった」(西沢氏)段階とする。また、小型機を規定する米国連邦航空規則(FAR)Part 23が2017年に改訂され、電動航空機に適用が可能になったことから、数社が機体開発を開始している。
また、大手航空機メーカーのAirbusは、100席クラスの旅客機「E-Thrust」を2030〜2040年代に初飛行させることを目標とする。E-Thrustは推進系にハイブリッド方式を採用していることが特長で、ジェットエンジンメーカーであるRolls-RoyceやSiemensと協業し、要素技術の開発に取り組んでいる。
西沢氏は、「日本企業は、モーターやバッテリー、インバーターなどのパワーエレクトロニクス技術など個別要素に長けているが、航空機電動化に関しては協業やビジネスの展開に遅れがある。しかし、まだ実用化が見えない領域なので国内企業にも参入のチャンスがある」と説明する。同コンソーシアム設立により、国内企業の協業促進、電動化のビジョンやロードマップ作成、共同で技術開発を行うための枠組み作りを推進するという。
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