電動飛行機の実現へ、JAXAらがコンソーシアムを発足:航空産業と電機産業の協業を推進(2/2 ページ)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、航空機の電動化技術を開発し、航空産業と電機産業の連携を促進することを目的とした「航空機電動化(ECLAIR:エクレア)コンソーシアム」を設立した。
航空機電動化の3つの道と技術課題
航空機の推進系電動化には、ファンをバッテリーに蓄えた電力のみで駆動するフルエレクトリック(純電動化)と、シリーズハイブリッド、パラレルハイブリッドの3つの方式がある。フルエレクトリックについて西沢氏は、「構造が単純で整備コストも低く、効率も良い。しかしバッテリー容量が飛躍的に向上しない限り、長距離の飛行は非常に難しい」との認識を示す。
シリーズハイブリッドは、発電用機関として熱機関が搭載され、推進ファンはバッテリーおよび熱機関由来の電力で駆動する方式。「燃料消費率を削減しやすいことが特長」(西沢氏)で、前述のE-Thrustもこの方式を採用する。また、パラレルハイブリッドは、推進ファンをバッテリー由来の電力と熱機関由来の動力で駆動する方式で、シリーズハイブリッド方式と比較して開発しやすいことが強みとなる。
また、推進系の電動化は、推進ファンのレイアウト自由度が向上するメリットがあるという。この長所を生かし、推進効率改善のため推進ファン搭載数を増やす手法や、空気抵抗削減を狙い、機体胴体後部に設置したファンで胴体表面の境界層を吸入する手法も考案されている。このように、推進系電動化は従来エンジンでは実現が困難だった技術の裾野や選択肢を広げる可能性があるという。
一方、旅客機の推進系電動化実現には大きな技術ギャップが存在する。モーターに関しては、単位質量当たりの出力が現状の5kW/kgから目標値が10〜15kW/kgと想定され、バッテリーに関しては、単位質量当たりのエネルギー密度が現状の150Wh/kgから目標値が500〜800Wh/kgが必要だと考えられている。
航空産業と電機産業、互いの技術をすり合わせることが必要
同コンソーシアムの究極的な目標として、「旅客機の推進系を電動化する」(西沢氏)ことを掲げるが、推進系電動化の実現は2040年代になると予想されており、開発に取り組む各社は長期間にわたる努力が必要となる。よって、同コンソーシアムでは、産業界が取り組みやすい短中期的な時間尺度で計画を立てるとし、生まれた成果は早期にビジネス展開が可能な小型機に転用することや、旅客機装備品の電動化に役立てるという。
旅客機の推進系電動化を日本企業が実現するためには、どういった点が重要となるのか。西沢氏は、電機産業と航空産業の認証や技術をすり合わせることが必要だとの認識を示す。
「航空産業で求められる電装品は、重量を削減することが最も重要だ。また、旅客機は高高度を飛行するため、気圧変動や放射線への耐久性も備える必要がある。このような航空産業のニーズや電機産業の最新動向などを互いにすり合わせたい。電機産業だけでは実現が難しい飛行実証の場もコンソーシアムを通じて提供できる」(西沢氏)
同コンソーシアムは現在、運営をつかさどるステアリング会員が経済産業省やJAXA、IHI、三菱電機などの8機関、一般会員は自動車メーカーなどを含めた8機関で構成されている。コンソーシアムによる成果は、定期開催のオープンフォーラムによって外部公表するとし、初回となる2018年12月21日にはコンソーシアムの将来ビジョンや成果目標を発表する予定だ。
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