製造装置の国産化を加速する中国:半導体開発だけではない(2/4 ページ)
「中国製造2025」の一環として半導体産業の強化を掲げる中国。今、中国国内には巨大な半導体製造工場が立ち上がりつつある。半導体製造装置については日米欧の寡占状態にあるが、中国は製造装置の内製化も進めようとしている。中国による製造装置の国産化は、どの程度まで進んでいるのか。
地域別の製造装置市場で中国がトップに
World Fab Forecastによれば、半導体工場の着工数において、2016年に中国が13工場、中国を除く世界全てが9工場となり、中国での半導体工場が建設ラッシュに入った。その着工数は2017年に、中国が26工場、中国を除く世界全てが22工場と、中国の半導体工場建設ラッシュの勢いが止まらない(関連記事:「半導体前工程の設備投資額、2019年まで4年連続成長へ」。
半導体工場を建設したら次は、製造装置を搬入する。図1は、地域別の前工程製造装置市場の推移を示したグラフである。2017年に、Samsungが3次元NANDフラッシュに約2兆円を投資したため、韓国市場が160億米ドルに急拡大している。Samsungは、向こう6年間、この投資規模を維持する見込みであり、製造装置市場も高止まりが続くだろう。
一方、2017年に約60億米ドルだった中国市場は、2018年に約93億米ドルとなって台湾をわずかな差で抜いて2位となった。2019年には約150億米ドルに成長して1位の韓国に接近し、2020年には韓国を抜いて世界最大の市場になるという予測もある。
それでは、装置の最大市場となりつつある中国は、各種の製造装置をどこから調達するのだろう?
各製造装置の企業別シェア
図2に装置ごとの企業別シェアと市場規模を示す。尚、米国企業は赤、日本企業は黄色で示した。
まとめると以下のようになる。
- 露光装置では、オランダのASMLがシェア86.9%と市場を独占している。2018年から出荷が本格化したEUV(極端紫外線)を供給できるのはASMLしかないため、この分野はASMLの独壇場になる
- レジストを塗布し、露光後に現像するコーター/デベロッパーは、日本の東京エレクトロン(TEL)が84.8%のシェアを独占している
- ドライエッチング装置では、米Lam Research(Lam)がシェア49.2%で1位、以下、TELが23.9%、Applied Materials(AMAT)が19.3%、日立ハイテクノロジーズが3.3%と続いている
- CVD装置では、1位のAMATが38.3%、2位のLamが34.5%とわずかな差であり、3位のTELが6.2%となっている
- PVD装置は、AMATがシェア78.1%と市場を独占し、日本のアルバックのシェアは7.6%しかない
- 熱処理装置は、TELが49.6%、日立国際電気が46.1%と、日本の2社がシェアを独占している
- CMP装置は、1位のAMATが72.1%、2位の荏原製作所が27.1%となっている
- バッチ式洗浄装置は、日本のSCREENが52.9%、TELが25.3%となっている
- 枚葉式洗浄装置は、1位のSCREENが41.6%、2位のTEL24.5%、3位の韓国SEMESが22.3%、4位のLamが11.6%となっている
- パーテイクル検査装置は、1位のKLA-Tencorが51.3%、2位のAMATが11.9%、3位の日立ハイテクが11.7%となっている
- パターン欠陥検査装置は、1位のKLA-Tencorが71.9%とシェアを独占し、2位のAMATが11.9%、3位の日立ハイテクが11.7%となっている
- 測長SEMは、日立ハイテクが75.5%とシェアを独占し、2位のAMATは24.5%となっている
以上から分かることは、第一に、一部韓国メーカーがシェアを奪っている装置もあるが、ほぼ日米欧で独占しているといえる。第二に、「1強+その他」、または、「2強」の状態にある装置が多い。つまり、各装置市場は、多くは日米の企業に寡占化されている。
そのため、米国が中国に対して「米国製装置は売らない」という圧力をかけ、さらに米国から日本に対して、「中国に装置を売るな」という圧力がかかったら、中国は大変困ったことになる。中国は、露光装置を除く、ほぼ全ての製造装置を、日米から購入することができなくなるからだ。すると、「中国製造2025」の1丁目1番地にある半導体産業の強化が、無力化される。
これに対抗するには、中国が半導体製造装置を国産化するしか道はない。果たしてそれは、可能なのか?
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