ロームがオーディオ向けブランドを始動、音質の秘訣は:前工程から後工程まで光るこだわり(1/2 ページ)
ロームはオーディオ機器向けデバイス事業の推進に意欲を高めている。同社のオーディオIC製品ラインアップの中でも最高峰モデルとなる数種に、新ブランド「ROHM Musical Device『MUS-IC』」を冠し、オーディオ機器メーカーやエンドユーザーに対して技術力を訴求する。
ロームはオーディオ機器向けデバイス事業の推進に意欲を高めている。同社のオーディオIC製品ラインアップの中でも最高峰モデルとなる数種に、この度新設したブランド「ROHM Musical Device『MUS-IC』」を冠し、オーディオ機器メーカーやエンドユーザーに対して技術力を訴求する。
同社は2018年8月8日、ROHM Musical Device「MUS-IC」に関するブランド戦略と、同ブランドを冠する予定である開発中の高音質オーディオ機器向けD-AコンバーターIC(以下、DAC)「BD34301EKV」の説明会を開催した。
音楽文化の発展に貢献してきたロームだからこそ
オーディオ市場における同社の取り組みは1970年代より始まる。アナログオーディオ機器向けLSIの提供を皮切りに、1980年代からデジタルオーディオ、圧縮オーディオ向け製品を展開。2012年より、ROHM Musical Device「MUS-IC」に通ずる音質設計技術の確立に向けた研究開発活動を開始し、2015年に後述する28個の音質パラメーターを操ることで同技術の確立に成功した。
ROHM Musical Device「MUS-IC」は、「これまでデバイスを開発してきたオーディオエンジニアによる音楽を重視したICを作るという熱い思い」(同社LSI本部 オーディオ・インフォテインメントLSI商品開発部 オーディオ開発課 課長の岡本成弘氏)が結実したものと語る。同ブランドを冠する製品は、品質第一、垂直統合生産、音質設計技術、そして音楽文化への貢献をキーワードとして開発される。
同社では、1965年より音楽文化を尊重する活動を始めてきた。1991年にはCSR活動として公益財団法人「ローム ミュージック ファンデーション」を設立しており、これまで若手音楽家への奨学援助やプロ音楽家を育成を目指した「音楽セミナー」の開催、「小澤征爾音楽塾」公演の共催など、多くの音楽文化支援活動に取り組む。特に、奨学援助活動では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で第1コンサートマスターを務める樫本大進氏をはじめ、400人超の世界各地で活躍する音楽家を輩出してきた。
「オーディオICの性能では、ノイズや歪みなど数値性能が最も大切だ。しかし、数値に現れない音質も同様に重要であり、エンジニアは自分の耳による聴感で音質評価を行う。ロームのオーディオエンジニアは、音楽文化に触れる機会に恵まれている。この社風は音質設計を形作る土台となった」(岡本氏)
垂直統合生産を特長とするロームだが、オーディオIC開発でもその強みを生かす。同社のオーディオIC開発では、1人の設計エンジニアが製品企画から回路設計、工場の生産設備立ち上げまでを一気通貫で担当する体制をとっており、そのエンジニアは各工程を受け持つ製造エンジニアと議論を交わすことで音質を作り込む。
音質の評価は、同社横浜テクノロジーセンターに設けた専用リスニングルームで、透明感や解像感、定位、低音の量感など各種項目を検討し、回路設計や生産工程にフィードバックを行うとしている。
ROHM Musical Device「MUS-IC」を冠する製品は、現時点では電源ICの「BD37201NUX」「BD37210MUV」「BD37215MUV」と、サウンドプロセッサICの「BD34704KS2」「BD34705KS2」「BD34602FS-M」が量産中。今回発表した新製品のDAC「BD34301EKV」は2019年夏のサンプル出荷を目指しており、さらに今後オーディオアンプICの製品展開を予定している。
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