「シュタインズ・ゲート」に「BEATLESS」、アニメのAIの実現性を本気で検証する:Over the AI(24)番外編 これがエンジニアの真骨頂だ(4/9 ページ)
前回で最終回を迎えた「Over the AI」ですが、番外編として、私がどうしても、どうしても、書きたかったコラムをお届けすることにしました。SFやアニメに登場するAI(人工知能)の実現性です。今回は、「シュタインズ・ゲート」や「BEATLESS」に登場するAIを取り上げ、エンジニアとして、それらの実現性を本気で検証してみました。
人工知能「アマデウス」は実現できるのか
まずはシュタインズ・ゲートと、シュタインズ・ゲート ゼロについて説明します。
シュタインズ・ゲートは、2種類の時間移動(数日レベルの「タイムリープ」と、数十年レベルの「タイムトラベル」)を使って、最悪の未来を変えようとする主人公達の絶望的な闘いを描きます(名作です)。
一方、シュタインズ・ゲート ゼロは、シュタインズ・ゲートのスピンオフ作品となっており、主人公が、恋人のいない世界を選択した後の世界を描きます(名作です)。
そして、シュタインズ・ゲート ゼロでは、人工知能「アマデウス」が登場します。
この人工知能アマデウスは、主人公の恋人"クリス"の生前の記憶を、全てコンピュータに格納しているだけではなく、人格までも引き継ぎ、コンピュータの中で、仮想的な「バーチャルクリス」として生き続けています。
―― これって、可能か?
もちろん、これは創作のアニメの中での話ですので、不可能であったとしても、全く問題はありません。
しかし、私は以前、人間の全部の遺伝情報(DNA情報)が、0.75GB(ギガバイト)、すなわち2時間映画のDVDの5分の1程度のDVDに格納可能であるという試算結果を出したことがあります(参考記事:他サイトに移行します)。
つまり、原理的には、生前に、血液や細胞などからDNA情報(DNAマップ)を得て記録しておけば、理論的には、そのDNAマップから完全同一のクローンを作ることは可能なのです(参考記事:他サイトに移行します)*)。
*)父の葬式の時に、位牌よりも、DNAマップが記録されたDVDが欲しいな、と思ってしまいました。お墓をクラウドコンピュータの中に作り、そこに父のDNAマップを保存しておき、各種イベント(四十九日、一周忌、お盆など)は、スマホやパソコンに向って拝礼するのです。
つまり、実際に計算してみると、思わぬものが見えてきたりするものなのです。
「アマデウス」の話に戻ります。「バーチャルクリス」を実現するためには、いろいろな条件がありますが、まずは、人間の大脳の1000億個のニューロンと、150兆のシナプスの情報の全ての情報を正確に取り出せるか、ということになりますが、まあ、これは無理でしょう。
なぜなら、今の医療現場でCTやMRIで確認できる脳の情報は、画像情報にすぎず、億や兆のレベルのミクロな脳の情報を数値で収集するようなものではないからです。
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