JOLED、印刷方式有機ELの事業化に向けた2つの布石:パネル量産と技術の外部提供を同時に
JOLEDは2018年8月23日、第三者割当増資による資金調達と、業務提携契約の締結を発表した。どちらの発表も印刷方式有機ELパネルの事業化に向けた布石であるが、自社の量産体制構築とともに、パネル製造技術の外部提供に踏み切る構えだ。
JOLEDは2018年8月23日、デンソーなど4社を引受先とした第三者割当増資による資金調達と、パナソニック プロダクションエンジニアリングなど2社との業務提携契約の締結を発表した。
どちらの発表も印刷方式有機ELパネルの事業化に向けた布石であるが、自社の量産体制構築とともに、パネル製造技術の外部提供に踏み切る構えだ。
総額470億円の資金調達、量産ラインの構築へ
第三者割当増資の引受先は、デンソー、豊田通商、住友化学、SCREENファインテックソリューションズの4社。総額470億円の資金調達を実施した。調達した資金は、2020年より稼働を予定するJOLED能美事業所の量産ライン構築に活用される。一方で、同社は2017年12月に開催した記者会見で、「量産体制の構築完了には約1000億円の調達が必要」との認識を示しており、今後も適宜に資金調達を行うとしている。
同社は、新たに株主となった4社と共同開発や業務提携、販路開拓などの協業を一層強化すると発表。具体的には、デンソーとは車載向けディスプレイの開発や事業展開、豊田通商とは同社ディスプレイ製品の販売体制強化、住友化学とは材料供給体制の強化を行う。SCREENファインテックソリューションズは同日発表された業務提携先でもあるが、印刷設備機器の開発、販売、サービス展開において協力を行う。
パネル製造技術の外部提供に踏み切る業務提携
業務提携は、パナソニック プロダクションエンジニアリングとSCREENファインテックソリューションズの2社と締結。同提携によりJOLEDを含めた3社は、「大型テレビ向け有機ELディスプレイ製造を目指すメーカーなどに向けて、印刷方式の製造技術を提供する『技術ライセンス』」(JOLED)の事業化を進めるとしている。
パナソニック プロダクションエンジニアリングは2015年のJOLED設立以降、共同で印刷設備の開発を継続しており、今回の提携では顧客ニーズに合わせた印刷設備の設計と開発を担う。SCREENファインテックソリューションズは、パナソニック プロダクションエンジニアリングからのライセンス提供を受け、印刷設備の製造、販売、メンテナンスなどのサービスをJOLEDと共に展開する方針だ。
本提携において対象となるパネルサイズについては、「特に定めておらず、顧客が決定するもの。蒸着方式の有機ELパネルを採用したプレミアムラインのテレビでは、55〜75型モデルが普及し始めているため、われわれもこのサイズを想定している」(JOLED広報)とする。
現在、想定する顧客とは既に接触を開始しており、「顧客との調整が完了次第、すぐに技術提供を行う準備は完了している」(同氏)段階とした。
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