ルネサス+Intersil+IDTの“三位一体”で新たな勝者へ:7300億円の買収を決断(1/2 ページ)
2018年9月11日に、IDT(Integrated Device Technology)を約67億米ドル(約7300億円)で買収すると発表したルネサス エレクトロニクス。米国EE TimesとEE Times Japanは、ルネサスの社長兼CEOである呉文精氏と、IDTのプレジデント兼CEOであるGregory Waters氏にインタビューを行った。
高いシナジー
2018年9月11日に、IDT(Integrated Device Technology)を約67億米ドル(約7300億円)で買収すると発表したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。2017年2月に約32億米ドル(当時の為替で約3200億円)で買収を完了したIntersilに続く、大型買収となった。EE Times Japanは、同年9月12日に米国EE Timesとともに、ルネサスの社長兼CEOである呉文精氏と、IDTのプレジデント兼CEOであるGregory Waters氏にインタビューを行った。
9月11日に開催した記者発表会で、ルネサスの社長兼CEOを務める呉文精氏が最も強調したポイントは、ルネサスとIDTの両社の事業領域に重複がないため大きいシナジーを期待できることと、データセンター市場への参入だ(関連記事:ルネサスのIDT買収会見要旨)
ルネサスはこの買収で、短期的なコスト効率化効果としては年間で約8000万米ドル、中長期的には約9000万米ドル、収益面でのシナジーとしては中長期的に営業利益ベースで1億6000万米ドルと見込んでいる。
この効果を達成できる理由について、呉氏、Waters氏ともに製品に重複がないことを強調。それだけでなく、呉氏によれば顧客基盤でもほとんど重複はないという。ルネサスのマイコンやSoC(System on Chip)、Intersilの資産であるパワーマネジメント製品、そしてIDTのミックスドシグナル製品は、産業や車載など「あらゆる分野で両社の成長を加速する」とWaters氏は述べる。
実際、IDTの事業領域「車載および産業」「通信」「民生」「データセンター」のいずれにおいても、ルネサスとのシナジーを見いだせると両氏は述べる。
車載分野では、IDTの車載向けセンサーインタフェースやセンサー信号コンディショナーはルネサスの販路を活用できる。通信向けとしてIDTが強みを持つRF製品は、基本的には4G、5Gといったモバイルネットワーク向けが中心だが、5Gは自動運転で使用できると期待されていることから、自動車分野との親和性は高い。民生では、例えばIDTのワイヤレス給電とルネサスの低消費電力マイコンを組み合わせ、ウェアラブル機器やIoT(モノのインターネット)機器向けに展開できる。さらにWaters氏は「ワイヤレス給電は電気自動車(EV)でも注目されているが、今後2年以内にEV向けのワイヤレス給電は本格的な実用化と普及が始まるとみている。そうなれば、ルネサスが持つ強力な車載ビジネスとのシナジーを、より発揮できるようになるだろう」と付け加えた。
ただし、データセンターについては、「技術的な面でのシナジーは、それほど大きくはない」と呉氏は述べる。現在、ルネサスがデータセンター向けに提供している製品には、Intersilが持っていたパワーマネジメント製品やメモリなどがあるが、呉氏は「ここはIDTが単独で強固な地位を確立している事業。ルネサスがIDTとともにデータセンター向けの製品を開発するというよりも、サポートしていくというイメージだ。IDTのデータセンター向けビジネスは非常に効率がよく、健全に成長している事業である」と語った。
Water氏は、「IDTにおいてデータセンター事業は既に、売上高の40%を占める最大の事業となっていて、今後も急速な成長が期待できる。将来的にルネサスのパワーマネジメント製品なども活用できれば、さらなる成長が期待できる」と付け加えた。
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