オシロ1台で電源ノイズとインピーダンスを測定:肝は「電源インピーダンス」改善(1/2 ページ)
キーサイト・テクノロジーは、オシロスコープ「Infiniium Sシリーズ」を用い、電源インピーダンスの周波数特性を測定できる「PIアナライザー」の本格販売を始めた。
技術者の「経験」や「勘」に頼らない電源ノイズ対策
キーサイト・テクノロジーは、オシロスコープ「Infiniium Sシリーズ」を用いて、電源インピーダンスの周波数特性を測定できる「PI(パワーインテグリティ)アナライザー」の本格販売を始めた。これまで技術者の「経験」や「勘」に頼っていたPI対策を、より効果的に行うことができる。
電子回路基板に搭載されるCPUやFPGA、高速メモリなどが高性能化、高機能化する中で、ICチップの動作電源電圧は小さくなり、ノイズマージンも減少する。一方で消費電流は増大し、電源回路上で負荷変動時に発生する高周波ノイズなどが課題となっている。
こうした電源ノイズは、高速波形のジッタ要因にもなり得る。このため、バイパスコンデンサーを用いて中高周波領域のインピーダンスを抑えるなど、必要な対策が行われてきた。キーサイト・テクノロジーによれば、「ボードトラブルの多くが、電源ノイズに起因するものである。しかも、電源ノイズの原因は、電源インピーダンスに依存するものが多い」という。
つまり、電源インピーダンスを正確に測定し、ピーク値を示す周波数に適したバイパスコンデンサーを実装し、インピーダンスを抑えるための対策を行うことができれば、最小限の部品点数で効率よく電源ノイズを低減することが可能となる。
キーサイト・テクノロジーは、電源ノイズ測定用途に向けて、オシロスコープ「Sシリーズ」とパワーレールプローブ「N7020A」を用い、数ミリボルトレベルまで電源電圧変動(IRドロップ)を正確に測定できるソリューションを提供している。これに対し、電源インピーダンス測定はこれまで、ネットワークアナライザー「E5061B」などを用いて、電源インピーダンスの周波数特性を測定し、原因を特定する必要があった。E5061Bは、5Hzから3GHzと広い周波数に対応でき、より高速に測定できるメリットがある。半面、新たな投資が必要となったり、オシロスコープに比べて操作がやや複雑であったりした。
そこで今回、技術者が使い慣れたSシリーズとN7020Aをベースに、PIアナライザーソフトウェアやテストセット、任意波形発生器などを追加するだけで、比較的簡単に電源インピーダンスの測定が可能となるPIアナライザーを新たに用意した。「PIアナライザーとE5061Bの測定データを比較し、相関性が優れていることは確認済み。周波数が100Hzから120MHzであれば、PIアナライザーで対応できる。120MHz以上の周波数になるとE5061Bが必要」と話す。
Sシリーズは周波数が500MHz帯域から8GHz帯域まで7モデル用意されているが、同社は2GHzモデルを推奨する。パワーレールプローブ「N7020A」が2GHz対応となっており最大の性能を引き出せるからだ。電源インピーダンス測定用の任意波形発生器は120MHzで1チャネルタイプの「33621A」や、20MHzで1チャネルタイプの「33509B」など4モデルを利用できる。
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