検索
連載

光送受信システムのリンクバジェット計算事例福田昭のデバイス通信(165) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(25)(1/2 ページ)

今回は、光送受信システムのリンクバジェットを計算した事例を説明する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

リンクバジェットとは何か

 半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」では、カンファレンスの前々日に「チュートリアル(Tutorial)」と呼ぶ技術セミナーを開催している。2017年12月に開催されたIEDMでは、6件のチュートリアルが開催された。

 その中から、シリコンフォトニクスに関する講座「Silicon Photonics for Next-Generation Optical Interconnects(次世代光接続に向けたシリコンフォトニクス)」が興味深かったので、その概要をシリーズでお届けしている。講演者は、ベルギーの研究開発機関imecのJoris Van Campenhout氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 前回は、光変調器を高速で駆動する電気回路、すなわちシリコンCMOSのドライバ回路を試作した事例を紹介した。今回は、光送受信システムのリンクバジェットを計算した事例を説明する。

 リンクバジェット(Link Budget)とは、通信の世界では送信側と受信側の信号経路に存在する利得と損失を合計することによって得られる、許容可能な損失を指す。ここで重要なのは、利得と損失をすべてdB値に換算しておくことである。dB値にしておくことで、異なるシステム間の比較や、通信の上り区間と下り区間の比較などが容易になる。無線と有線を問わずに通信システムの設計作業では、リンクバジェットを計算することが欠かせない。

波長多重方式とEA変調器のシステムにおける計算例

 講演では、2つの光送受信システムについてリンクバジェットの計算例を紹介した。始めは、4波長のDFB(分布帰還型)半導体レーザーとGeSiの電界吸収変調器(EA変調器)、フォトダイオードなどを備える波長多重方式の光送受信システムで挿入損失を個別に計算した事例である。


4波長のDFB(分布帰還型)半導体レーザーとGeSiの電界吸収変調器(EA変調器)、フォトダイオードなどを備える波長多重方式の光送受信システムでリンクバジェットを計算した例。左側は光送受信システムの構成と挿入損失。右側の表が挿入損失のまとめ (クリックで拡大) 出典:imec

 送信側の主な損失は、EA変調器の消光比が6.0dB、シリコン光導波路と光ファイバーとの結合損失が2.5dB、EA変調器の挿入損失が2.0dB、半導体レーザーとシリコン光導波路の結合損失が2.0dBなどである。

 受信側の主な損失は、シリコン光導波路と光ファイバーとの結合損失が4.0dB、4波長のデマルチプレクサの挿入損失が1.0dBなどである。このほか、送受信間に光ファイバーリンクの損失が2.0dBほど存在する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る