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光送受信システムのリンクバジェット計算事例:福田昭のデバイス通信(165) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(25)(2/2 ページ)
今回は、光送受信システムのリンクバジェットを計算した事例を説明する。
波長多重方式とリング変調器で56Gbpsを伝送するシステムの計算例
次に、波長多重(WDM)方式とリング変調器、フォトダイオードなどで構成する光送受信システムのリンクバジェットを計算した事例を紹介した。伝送速度の目標仕様は56Gビット/秒(bps)である。dB値のほか、光送受信システムの要所における電力値(光パワー)も計算している。
波長多重(WDM)方式とリング変調器、フォトダイオードなどで構成する光送受信システムのリンクバジェットを計算した事例。左側は挿入損失と光パワーの一覧表。右側はエネルギー損失の内訳 (クリックで拡大) 出典:imec
送信側の主な損失は、リング変調器の消光比が6.0dB、リング変調器の挿入損失が3.0dB、光ファイバーとシリコン光導波路の結合損失が2.5dB、半導体レーザーとシリコン光導波路の結合損失が2.0dBなどである。
受信側の主な損失は、光ファイバーとシリコン光導波路の結合損失が5.0dB、波長デマルチプレクサの挿入損失が1.5dBなどである。
光パワーはチャンネルあたりの半導体レーザー出力が7.6mWで、これがリング変調器の入力時点では4.0mWに減少する。そして光ファイバー入力が0.5mW、光ファイバー出力が0.3mWとなる。フォトダイオードに入る光パワーは0.1mWである。
そして1ビットの伝送で許容可能なエネルギー損失は全体で2.91pJを目標仕様とした。内訳は半導体レーザーが1.35pJ、デマルチプレクサのヒーターが0.57pJ、リング変調器のヒーターが0.36pJ、リング変調器のドライバと光受信側のトランスインピーダンスアンプがそれぞれ0.27pJ、マルチプレクサのヒーターが0.09pJである。電力換算では、約165mWとなる。
(次回に続く)
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