5Gで水晶の置き換え狙う、±5ppbの「MEMS OCXO」:周波数安定性は水晶比で10倍(2/3 ページ)
SiTimeは2018年11月5日、主に5G(第5世代移動通信)ネットワークで使用されるタイミングデバイス向けに、恒温槽型(オーブン制御)のMEMS発振器を主製品とするプラットフォーム「Emerald」を発表した。±5ppb〜±50ppbという高い周波数安定性を実現している。
超高精度なタイミングデバイスが要求される5G
現在、4G向けのネットワークノードで主に使われているタイミングデバイスは、OCXOとTCXO(温度補償型水晶発振器)だが、5Gネットワークでは、さらに高精度なタイミングデバイスが必要になる。機械の遠隔操作、高精度測位、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転など、5Gの特性を生かしたさまざまなアプリケーションはいずれも、無線間の時刻同期が正確でなければならない。2つの無線間に許容される時刻同期のずれは130ナノ秒といわれている。4Gでは1.5マイクロ秒なので、桁が違う。
さらに、5Gでは高密度のネットワークを構築するため多数のスモールセルを設置する必要があるが、スモールセルは、さまざまな所に設置できる分、振動が激しい所や温度差の激しい所など、過酷な環境に置かれる可能性もある。
つまり、安定性と信頼性を備えたタイミングデバイスが5Gには必須になるのだ。「ここで、EmeraldのMEMS OCXOが力を発揮する」と、Sevalia氏は述べる。
精度が5ppbオーダーのOCXOも存在する。だが、これだけ高精度のOCXOは扱いが極めて難しい。「5ppbのOCXOは非常に繊細な発振器。呼吸による空気の動きや、基板に触れた時のわずかな振動がOCXOに大きな影響を与えてしまう。そのためエンジニアにとって、5ppbのOCXOを使って開発するのはかなり大変な作業になる。さらに、OCXOをプロセッサなどのチップ近傍に置く場合、チップから発生する熱がOCXOに影響を与える」(Sevalia氏)
OCXOを使う場合、熱や気流から保護するためにはカバーが必要だが、MEMS OCXOでは不要だ。さらに、外部レギュレーターも不要である。こうしたMEMS OCXOの特長によって、開発が容易になり、開発期間も短縮するとSevalia氏は述べる。「一部の顧客にサンプルを提供しているが、極めて好評だ」(同氏)
Emerald製品ファミリーでは現在3製品をラインアップしている。精度が±5〜±10ppbで、Stratum 3Eに準拠した2製品と、低価格だが±15〜±50ppbと少し精度を落とした1製品だ。±5〜±10ppbの2製品は、I2Cでプログラムできる機能を備えたものと、備えていないものがあり、後者(備えていないもの)については既にサンプル出荷を開始している。
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