UTPでHDを伝送、車載カメラバス技術「C2B」登場:超低遅延で
Analog Devices(アナログ・デバイセズ)は2018年11月、安価なケーブルでHD画質映像を遅延なく伝送できる車載カメラ向けバス技術「C2B」(Car Camera Bus)を発表した。既にC2Bを実現するトランシーバーICのサンプル出荷を開始し、同月から順次量産出荷を開始する。
Analog Devices(アナログ・デバイセズ/以下、ADI)は2018年11月、安価なケーブルでHD画質映像を遅延なく伝送できる車載カメラ向けバス技術「C2B」(Car Camera Bus)を発表した。既にC2Bを実現するトランシーバーICのサンプル出荷を開始し、同月から順次量産出荷を開始する。
車載イーサネットよりシステムコスト抑えられる
C2Bは、シールドなしツイストペアケーブル(UTP)1本で、毎秒60フレームの720p、ないし、毎秒30フレームの1080pのHD画像を伝送できるバス技術。また、映像信号と同時に、制御信号も伝送できる。映像は非圧縮で伝送するため「ほぼ遅延はない」(ADI担当オートモーティブビジネスユニット オートモーティブキャビンエレクトロニクス担当ジェネラルマネージャー Vlad Bulavsky氏)という点も特長だ。
車載カメラ映像はこれまで標準(SD)画質が主流で、映像伝送はUTPを使用したアナログ伝送を使用する場合が多かった。しかし、車載ディスプレイの高精細化に伴い、カメラ映像の高解像度ニーズが高まり、一部高級車では映像伝送にLVDS技術や車載イーサネット技術を用いてHDカメラに対応している。ただ、LVDS技術や車載イーサネット技術では、ケーブルにシールドが必要であったり、通信用プロセッサが高価であったり、とシステムコストの増大を招いた。Bulavsky氏は「車載イーサネットの場合、映像データは、まず送信側でMAC(論理)層からPHY(物理)層を経る際に変換され、さらに受信側でもPHY層からMAC層へと変換される。この変換で遅延が生じる。遅延が生じるために、遅延を抑えるには、より伝送帯域を広くする必要があり、そのためにプロセッサなどの能力を要することになる。そうした見えにくい部分でもコストが掛かる。C2Bはマイコンを追加することなく、送受信それぞれのトランシーバーICのみで構成できる」と指摘する。
早ければ2019年にも市販車搭載へ
その上でBulavsky氏は「仮に、1台のカメラでリアビューシステムを構成する場合、C2Bは車載イーサネットよりも5米ドル程度、システムコストを削減できるだろう」という。
伝送距離についても「LVDSなどでは、伝送距離が長くなると減衰がみられ、その伝送距離は15m程度である。一方、C2Bは、極めてノイズに強く、実験レベルでは30mの伝送距離でも問題なく通信できることを確認している。バスやトラックなどにも対応できるバス技術だ」と述べる。
ADIでは既に、C2B対応トランシーバーICシリーズ「ADV7990/ADV7991/ADV7380/ADV7381」のサンプル出荷を開始し「顧客での評価が進んでいる状況」とする。「高級車に限らず多くの車種で、HD画質カメラ対応を実現できるバス技術。早ければ2019年にも、C2B技術を採用した市販車が登場する見込みだ」(Bulavsky氏)としている。
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