1km飛ぶWi-Fi、「802.11ah」実用化に向け協議会が発足:国内利用に加速(3/3 ページ)
2018年11月7日、920MHz帯を使用するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格「IEEE 802.11ah」の国内利用実現に向け、56の企業および団体により「802.11ah推進協議会」が発足した。
コストと消費電力
気になるのはコストと消費電力だ。小林氏はコストについて、「2017年度におけるWi-Fiチップの世界出荷数は30億個だった。802.11ahはWi-Fiファミリーなので、802.11acとセット(マルチモードモジュール)で製造することが考えられる。そうなると、チップの生産規模は非常に大きくなると考えられ、いったん導入が始まればかなり安価にネットワークを構築できるのではないか」との見解を示した。なお、802.11ah対応のデバイスの単価などについては、まだチップができたばかりの段階なので、現時点では明言できないとのことだった。
一方で消費電力については、無線の動作モードによって大きく変動するものの、現行のLPWAに比べると課題はあるという。ただし、もともと802.11ahはIoTをかなり意識して策定された規格なので、バッテリー駆動の機器はターゲットの一つとなっている。今後は、協議会の中で、ユースケースの技術要件を集めてフィードバックし、消費電力の向上を目指していくとした。
記者発表会の場では、802.11ahを使った画像伝送のデモも行われた。米国で販売されているNewracomのデモボードを使用している。デモでは、実際に電波を送信できないので、端末に見立てたボードとAPに見立てたボードのアンテナ間を同軸ケーブルでつなぎ、減衰器を入れて、「1km離れた場所に画像を伝送する」という状況を模擬的に再現している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- LPWAとWi-Fi HaLow、完全に競合する可能性も
Wi-Fi Allianceと無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)は共同で、Wi-Fiの今後を議論するイベント「2016 Tokyo Wi-Fi Summit」を2016年7月27日に東京都内で開催した。Wi-Bizの会長は、IoT(モノのインターネット)向けネットワークでは、Wi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)と、SigfoxやLoRaといったLPWA(Low Power Wide Area)が「完全に競合する可能性があり、使い方をきちんと議論する必要がある」との見解を示した。 - 勢力図広げるLoRaWAN、日本では防災で高いニーズ
LoRa Allianceは2018年10月25日、東京都内で記者説明会を開催し、LoRaWANの現状や日本での採用事例、実証実験事例を紹介した。日本では、防災での活用が始まっている。 - 次世代Wi-Fi規格「802.11ax」、標準化完了に向け前進
2018年7月1日は、次世代無線LANの規格であるIEEE 802.11ax(以下、802.11ax)にとって記念すべき日となる。エンジニアらは、同規格の初期ドラフトがこの日に認可されると見込んでいる。 - BLE Ver5.0対応のSoC、600mの通信距離を実現
東芝と東芝デバイス&ストレージは、通信距離が長いBluetooth Low Energy Ver.5.0規格に準拠したSoC(System on Chip)を開発した。 - 独自のLPWA通信規格、ソニーが世界普及目指す
ソニーは、独自のIoT(モノのインターネット)向け低消費電力広域(LPWA)ネットワーク技術が、ETSIより国際標準規格として公開されたのを機に、世界市場での普及を目指す。 - 金属上でも特性劣化なし、京セラが新型アンテナ
京セラは、「CEATEC JAPAN 2018」で、金属や水の近くで使用しても電波強度が低下しない新型アンテナ「Amcenna(アムセナ)」を展示した。