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アトミックレイヤーエッチングとドライエッチング技術の未来展望湯之上隆のナノフォーカス(6) ドライエッチング技術のイノベーション史(6)(3/5 ページ)

ドライエッチング技術のイノベーション史をたどるシリーズの最終回は、アトミックレイヤーエッチング技術に焦点を当てる。さらに、今後の展望についても考察する。

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ALEの原理

 シリコンのALEの事例を、図5を用いて説明する。


図5:ALEの原理(Siのエッチングの事例)(クリックで拡大) 出典:Lam ResearchのWebサイト

1)ウエット洗浄を行って、シリコン表面をクリーンにする。
2)ラジカルとして、塩素をシリコン表面に吸着させる。
3)塩素をパージし、ステップを切り替える。
4)Arイオンを照射すると、反応性イオンエッチングにより、SiCl4が揮発する。
5)シリコン原子一層分の除去が完了する。

 このとき、シリコンなどの導電膜では、2)のラジカル吸着過程で、塩素が原子一層分しか吸着しない。この現象を、セルフリミッティングという。この効果により、Arイオンを照射すると、シリコン原子が一層分だけエッチングされる。

 一方、SiO2などの絶縁膜では、2)でCFxラジカルを吸着させるが、セルフリミットがかからず、時間とともにCFxラジカルがどんどん堆積してしまう。そのため、SiO2のALEにおいては、CFxラジカルの吸着の時間などを、精密に制御しなくてはならない。

 導電膜と絶縁膜では、このようにセルフリミッティングに大きな違いがあり、実用化するには導電膜のALEの方がやりやすいと思われていた。ところが、実際に量産適用されたのは、セルフリミッティングがかからないSiO2のALEだった。そのアプリケーションは、先端ロジック半導体のセルフアラインコンタクト(Self-Aligned Contact、SAC)という工程だった。

SACとは何か

トランジスタを形成した後、密集したトランジスタ間に、次のようなプロセスフローでコンタクトホールを形成する(図6)。


図6:コンタクトホールの形成プロセス

1)トランジスタを形成する。
2)SiO2膜を成膜し、トランジスタを埋め込む。
3)CMPによりSiO2膜を平たん化する。
4)リソグラフィにより、孔のレジストパターンを形成する。
5)ドライエッチングにより、コンタクトホールを開口する。
6)レジストを除去し、孔底を洗浄する。
7)タングステン(W)を成膜する。
8)不要なWを除去する。これで、Wで埋め込まれたコンタクトホールが完成する。

 ところが、4)の孔のレジストパターン形成の際、レジストパターンの中心が、二つのトランジスタの中心に合うとは限らない(図7)。というより、現実には、必ず、合わせずれが起きる。


図7:セルフアラインコンタクト(SAC)の原理(クリックで拡大)

 SACとは、このような合わせずれが起きても、ゲート電極をSiNが保護することにより、コンタクトホールのドライエッチングの際に、ゲート電極が露出しないように工夫したプロセスである。

 もし、ゲート電極が露出すると、Wで埋め込まれたコンタクトホールとゲート電極が、電気的に接触(つまりリーク)してしまい、トランジスタ動作に不具合をきたすことになる。

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