AMDの製品発表で見えた7nmプロセスへの期待と懸念:オープン性に対する要求も(1/2 ページ)
AMDが2018年11月に発表した、7nmプロセス適用のx86サーバ向けプロセッサ「EPYC」と、GPU「Vega」。AMDのこの発表により、「現在上昇の一途にあるハイエンドプロセッサのコストが、低減していくのではないか」という期待の波が押し寄せている。一方で、アクセラレーター向けのオープンソースコードの品質に関する懸念も生じている。
プロセッサのコスト減に向けた期待
AMDが2018年11月に発表した、7nmプロセス適用のx86サーバ向けプロセッサ「EPYC」と、GPU「Vega」。AMDのこの発表により、「現在上昇の一途にあるハイエンドプロセッサのコストが、低減していくのではないか」という期待の波が押し寄せている。一方でこの発表により、最先端プロセス技術の収穫逓減(ていげん)の例が提示されたことで、アクセラレーター向けのオープンソースコードの品質に関する懸念が生じている。
EE TimesがTwitterでやりとりしたドイツのある科学研究者は、「1万米ドルを超えるNVIDIAのハイエンドGPU『Tesla V100』は、われわれの出資ガイドラインでは簡単に発注することができない」と懸念している。
また、英国の研究者は、「欧州のバイヤーにとって、価格が1万5000米ドルを上回ると、IntelとNVIDIAの粗利益が63%を超えることから、持続可能ではない」と指摘している。
同氏は、「NVIDIAは非常に優れた製品を提供しているが、この問題は、CPUおよびGPUの両市場における競争が激化しなければ解決できないだろう。AMDやCavium(Marvell Technology Groupが買収)、富士通、Ampereなどには、ぜひ前に進んでもらいたい。われわれの研究は、現状を受けて苦境に置かれている」と述べている。
AMDは、同社のメモリコントローラーとI/Oに14nmプロセスのダイを実装することにより、明らかに7nmプロセスのx86向けEPYC CPUのコストを削減している。しかし、新しいAMD製品によって、どの程度の価格競争が繰り広げられるのかは、今のところまだ分からない。7nmプロセス製品が予想を超える成功を収めた場合、AMDは、現在唯一の7nmプロセスのプロバイダーであるTSMCから提供されるウエハーの量について、制約を受ける可能性がある。
米国の市場調査会社であるIDC(International Data Corporation)のアナリストであるMario Morales氏は、「Intelは、製品の発表前に、自社の全ての生産能力をハイエンドデバイスに集中させる考えであると発表し、PC需要の復活には対応できないと主張した。しかし実際には、全体的な需要が増加しているわけではない。むしろ、IntelはAMDに対し、ローエンド分野を追求するよう仕向けようとしていた可能性がある」と述べている。
Morales氏は、「PC市場は現在、伸び悩んでいる。ただし例外として、エンタープライズ分野の需要は、適度に上向いているようだ。実際に中国では、PC市場全体の中で最も大きい分野を占めるデスクトップPC/ノートPC市場が、わずかに縮小傾向にある」と述べる。
ソフトウェアの品質については懸念も
研究者たちは、新しいAMD製品によって価格競争が刺激される可能性があるとして歓迎している。しかし同時に、Twitter上では、GPGPU向けのソフトウェアの現状について不満の声も上がっている。
ある研究者は、「当初から、コードの品質が低いことがAMDのGPUコンピューティングソフトウェアスタックの弱点だった」と述べている。
別の研究者は、「AMDのGPU『Radeon』のオープンソースのLinuxドライバーは(NVIDIAとは対照的に)、あらゆるコンピューティングコンポーネントを備えていることが利点だ。しかし、オープンソースソフトウェアはバグが多く、それが普及の妨げになっている」と主張する。
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