アンテナを高く張れ! 半導体製造装置材料業界がスーパーサイクルを勝ち抜くために:野村証券和田木哲哉氏×SEMIジャパン浜島氏(2/5 ページ)
野村証券アナリストの和田木哲哉氏と、半導体製造装置/材料の業界団体SEMIの日本代表(SEMIジャパン社長)を務める浜島雅彦氏に、これからの半導体市況、そして、半導体製造装置/材料業界に求められることなどを聞いた。
スーパーサイクルの行方
浜島氏 “スーパーサイクル”という言葉は、本当に良い言葉。シリコンサイクルのイメージが定着してしまっていた半導体製造装置/材料業界を元気付けるという意味でも、良いタイミングで、良いネーミングをいただいた。ただ、足元を見ると、メモリメーカーなどの投資に少しブレーキが掛かっています。これから“スーパーサイクル”はどうなると和田木さんはみられていますか。
和田木氏 おっしゃる通り、DRAM、フラッシュともにややブレーキが掛かっていますが、あまり気にしなくて良いでしょう。
浜島氏 と、言いますと?
和田木氏 フラッシュで言えば、2016年半ばに、オンラインサーバ領域に限ってですが、フラッシュサーバの初期導入コストがHDDサーバよりも安くなり、フラッシュサーバの需要が急拡大しました。ですが、需要増によりフラッシュは値上がりし、2017年半ばにはHDDサーバとフラッシュサーバの相対価格差は、2倍近くに戻ってしまいました。
当初は、オンラインサーバ領域では、消費電力も体積も小さく、熱も出ず、メンテナンスも容易なフラッシュサーバに一気に置き換わるとみていましたが、HDDサーバとの価格差が再び開いたことで「置き換えがいったん止まった」という状況でしょう。
浜島氏 今回の需給調整はいつ頃、終わるのでしょうか?
和田木氏 メモリメーカー各社の戦略にもよる部分ですので、時期を明言するのは非常に難しいです。ただ、現状、3割程度になっているフラッシュとHDDの価格差が解消されれば、再び、フラッシュサーバがオンラインサーバを置き換えていくことは確かです。しかも、そのポテンシャルは、300mmウエハー月産5万枚規模の3D NAND製造ラインが、あと10ライン必要になる需要量と試算しています。全世界の3D NAND生産能力を現状の1.3倍から1.5倍に引き上げないと追い付けない巨大な需要です。問題は、価格差だけであり、その価格差が埋まるのは時間の問題であり、気にするような状況ではありません。
浜島氏 HDDサーバに比べて、フラッシュサーバは利点が多く、すぐにフラッシュサーバがオンラインサーバの全てを置き換えるでしょう。ただ、置き換えてしまえば、スーパーサイクルは終わりを迎えるのでしょうか? 和田木さんは、IoTや5Gで創出される巨大な半導体需要を含めて“スーパーサイクル”と、おっしゃているように思っていますが。
和田木氏 アナリストは、株価に具体的に落とし込めるところまで来ないと、なかなか明言できないものであり、現状のスーパーサイクルについては、フラッシュサーバによる需要に限ったものを指しています。そのため、現状のスーパーサイクルは、フラッシュサーバがオンラインサーバを置き換えた時点で、おしまいです。とは言え、当初は2年ほどで終わるとみていたフラッシュサーバ需要によるスーパーサイクルですが、需給調整も入ったことで、長生きしているという印象ですが……。
ただ、今回のスーパーサイクルが終わるころには、浜島さんのおっしゃる通り、フラッシュサーバに代わる別のアイテムが出てくるのは間違いないと思います。
フラッシュサーバの次のアイテムとは?
浜島氏 私は、5Gが一つ大きな半導体需要をドライブする要因になるとみています。デバイス技術が高まり、計算能力、ストレージ能力は劇的に上がりました。そこに、5Gの実用化により、通信のポテンシャルが大幅にアップすることになる。計算、メモリ、通信の3つが掛け合わさってくると、思いもよらなかったアプリケーションや、実現できなかった応用ができるはずで、巨大なマーケットを生むでしょう。IoTや自動車などが次のスーパーサイクルを生み出す候補ですね。
和田木氏 医療、ヘルスケアもその可能性がある分野だと思います。
浜島氏 われわれSEMIでも、医療分野には大きな可能性があると位置付け、活動を強化しています。例えば、2年ほど前に、フレックス技術の業界団体であるFlexTech Allianceを統合してました。この団体は、ウェアラブル医療端末などの実現に不可欠なフレキシブルエレクトロニクス技術の発展、普及を啓もうしている団体。半導体技術とフレキシブルエレクトロニクス技術の融合を図り、市場創出を加速させたいと考えています。
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