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AIチップの半導体業界への影響IHSアナリスト「未来展望」(12)(1/2 ページ)

「AIはなぜ必要になっているのか?」「いつからどれくらいの規模で市場が立ち上がるのか?」は一切報道されない。ここではこの2つの疑問についてIHSの見方を説明していきたい。

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 AI(人工知能)という言葉が新聞紙上に掲載されない日はないほど、最近では一般的な言葉として使われている。しかし、「AIはなぜ必要になっているのか?」「いつからどれくらいの規模で市場が立ち上がるのか?」は一切報道されない。ここではこの2つの疑問についてIHSの見方を説明していきたい。

 AIが求められている要因は2つあるとみている。1つ目はこれまでのノイマン型CPUではディープラーニングや膨大なデータ処理を行うには処理能力が不足し始めたこと。膨大なデータ処理とは、通常の処理では考えられないほど膨大な情報量で数十テラバイト以上の処理、テキスト・画像・音声・センサー情報などの多種多様性なデータの処理、それらをリアルタイム処理することである。2つ目は現在のCPUでは消費電力が大きくなり過ぎていることであるとみている。

微細化の鈍化と消費電力

 1つ目の処理能力の問題は半導体の微細化のスピードが鈍化し始めたことに原因がある。これまで50年間にわたり半導体は2年でトランジスタ数が2倍になる、いわゆる「ムーアの法則」に従って微細化が行われ、CPUは処理能力と消費電力を削減することができた。しかし、14nmあたりからそのスピードは確実に鈍化し始めた。さらに同じウエハーを処理するための設備投資が急増し始めたため、経済的にも微細化を続ける理由が薄れてきている(図1

図1
図1:設備投資金額とプロセス微細化の推移

 次に2つ目の消費電力に関してみてみる。現在、AIチップとして販売されているチップはこれまでのノイマン型で依然として消費電力は高いままである。ちなみにノイマン型CPUを使った代表的なIBM Watsonは最大8万5000Wの電力を消費するが、人間の脳の消費エネルギーは20W程度と言われている。もちろん今の半導体技術でいきなり人間の脳に匹敵するチップを製造することは不可能だが、人間の脳を模倣したAIチップを開発することは必要になっていく。現在、データセンターが消費する電力は世界の総電力の4%程度と試算されている。しかし、ビッグデータを処理することが必要になれば2030年ごろは10%を超えることもあり得る。このように大量の電力を消費してビッグデータを活用してエネルギー削減に寄与したとしても本末転倒であり、消費電力がネックになると考えている。

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