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AIチップの半導体業界への影響IHSアナリスト「未来展望」(12)(2/2 ページ)

「AIはなぜ必要になっているのか?」「いつからどれくらいの規模で市場が立ち上がるのか?」は一切報道されない。ここではこの2つの疑問についてIHSの見方を説明していきたい。

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CPUでは追い付かない処理能力

 いずれにしてもビッグデータや仮想通貨、ブロックチェーン、人工知能など、最近の技術トレンドは大規模な処理能力を必要とし、もはやCPUの微細化による集積率アップに依存していては処理能力アップが追い付かない状況である。そこで登場しているのが、GPU、FPGA、ASICのようなCPUを補助する演算処理チップだ。もともとGPUは、コンピュータグラフィックスに必要な演算を行うためのビデオチップであった。CPUに比べてコア数が膨大で、コア数が数個程度のCPUに対してGPUは数十個から数千個のコアを持つものまである。

 CPUが汎用的な処理を行えるのに対して、GPUはCPUの命令を受けて大量コアによりシンプルな行列演算を一気に並列演算処理するのに向いている専用チップである。GPUはもともと画像処理を行うための専用チップだが、その後も動画編集やCAD、3Dゲームへと適用範囲が広まり、そうした市場が拡大する中でGPUの最大手として成長してきた企業がNVIDIAである。

 2012年にGoogleが1000台のコンピュータ(=2000個のCPU)で猫の画像を認識した。ディープラーニングの将来性に目を付けたNVIDIAは、その翌年の2013年に、深層学習の演算処理にGPUを使う実験を行って、12個のGPUが2000個のCPUに匹敵するという結果を発表した。そして、今ではディープラーニングには当然のようにGPUが使われるようになっている。

 次代のコンピュータ基盤とサービスの覇権を握るべく、AIチップの開発競争が始まっている。Intel、NVIDIA、Arm、Google、Facebook、Apple、Amazonなども新世代のデバイスやサービスの開発に向けてオリジナルチップ開発に舵を切っている。

AIチップ市場は2022年以降に急拡大へ

 IHSではAIチップを3種類に分類して、将来の市場規模予測を行っている。3つの分類とは、【1】既存のCPUを活用してディープラーニングを行うもの、【2】AIに適したアーキテクチャにしているGPUやASICなど、【3】人工知能チップ言われる非ノイマン型チップ、の3つである。2027年にはこれら3つの分類トータルでの市場規模は半導体全体の約6%を占め、2兆円規模のチップビジネスになっているとみている。AIの時代は今スタートしたばかりでデータセンターや自動運転に使われることで2022年以降に急拡大するだろう。


読者の皆さまへ 無料セミナー開催のお知らせ

 IHS Markitでは、主に本連載読者を対象とした「無料セミナー」を不定期で開催しています。南川明アナリストの解説による「AIチップの半導体産業への影響」の他、「IoT」「5G」などの注目テーマを取り上げ、IHS Markit 会議室(東京・京橋)にて無料招待します(1回あたり定員15人程度)。参加ご希望の方、次回の開催日程や取り上げる内容などセミナーの詳細情報を知りたい方は、セミナー事務局(mitsuhiro.kato@ihsmarkit.com)までメールをお願いします。

筆者プロフィール

南川 明(みなみかわ あきら) IHS Markit テクノロジー 日本調査部ディレクター

 1982年からモトローラ/HongKong Motorola Marketing specialistに勤務後、1990年ガートナー ジャパン データクエストに移籍、半導体産業分析部のシニアアナリストとして活躍。その後、IDC Japan、WestLB証券会社、クレディーリヨネ証券会社にて、一貫して半導体産業や電子産業の分析に従事してきた。2004年には独立調査会社のデータガレージを設立、2006年に米iSuppliと合併、2010年のIHSグローバルとの合併に伴って現職。JEITAでは10年以上に渡り,世界の電子機器と半導体中長期展望委員会の中心アナリストとして従事する。定期的に台湾主催の半導体シンポジウムで講演を行うなど、アジアでの調査、コンサルティングを強化してきた。


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