MediaTekのスマホ向けSoC、「Snapdragon」に対抗:「Helio P90」を発表
MediaTekは、Qualcommがスマートフォン向け新SoC(System on Chip)「Snapdragon 855」を発表したわずか1週間後に、スマートフォン向け次世代SoC「Helio P90」を発表した。
MediaTekは、Qualcommがスマートフォン向け新SoC(System on Chip)「Snapdragon 855」を発表したわずか1週間後に、スマートフォン向け次世代SoC「Helio P90」を発表した。Helio P90は多くの点でSnapdragon 855に及ばないが、フラグシップスマートフォンの下位製品向けSoCとして激しいシェア争いを繰り広げると予想される。特に、コスト意識の高い中国の完成品メーカー(OEM)に向ける。
Helio P90は12nmプロセスを採用した製品で、最大2.2GHzで動作する「Cortex-A75」コア2基と2.0GHzで動作する「Cortex-A55」コア6基を搭載する。一方、Snapdragon 855は7nmを適用し、4基の大型コア(最大動作周波数2.84GHzのコア1基と2.42GHzのコア3基)と、1.80GHzのCortex-A55コア4基を搭載している。
前世代の「Helio P70」は、最大動作周波数2.1GHzの「Cortex-A73」と2.2GHzの「Cortex-A53」を4基ずつ搭載する構成で、12nmプロセスの速度向上を生かしきれていなかった。2×6構成のHelio P90は、電力効率をさらに重視した設計になっている。
コネクティビティに関しては、最大2波のキャリアアグリゲーション(CA)に対応するLTE Cat 7から、最大3波のCAに対応するLTE Cat 13に向上し、最大600Mビット/秒(bps)の下り速度を実現したという。Helio P90は、2×2 MIMOに対応するWi-Fi規格「IEEE 802. 11ac」に準拠している。
Snapdragon 855は、最大7波のCAと10Gbpsのデータレートを実現する2種類のWi-Fi(60GHz帯の「IEEE 802.11ay」と新しい「IEEE 802.11ax」)に対応するLTE Cat 20モデムを搭載している。さらに、Qualcommは2019年初めに、同社の5G(第5世代移動通信)モデムを搭載するSnapdragon 855を、Samsung Electronicsと中国のスマートフォンメーカーOnePlusの第1世代の5Gスマートフォン(6GHz帯以下のミリ波帯を使用)向けに提供するという。
さらにMediaTekは、同社初となるスタンドアロンの5Gモデムチップ「Helio M70」を発表した。だが、販売および事業開発担当シニアディレクターを務めるRuss Mestechkin氏は、「現時点では、同モデムをどれくらい商用提供できるかは分からない。6GHz帯以下に特化したスタンドアロンモデムとして提供することよりも、2019年後半から2020年初頭に提供するSoCに搭載することを重視しているからだ」と述べている。
同氏は、「当社が目指しているのは、1000米ドル以上の超プレミアムモデルではなく、スマートフォン市場で主流となる500米ドル程度の製品向けSoCの商用化だ」と付け加えた。
MediaTekは2016年と2017年に、成長の著しい中国のスマートフォンメーカーのデザインウィンを獲得したが、2018年はQualcommが中国向けのシェアを取り戻している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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