政府の地雷? 「若者人材育成」から読み解くひきこもり問題:世界を「数字」で回してみよう(54) 働き方改革(13)(4/10 ページ)
今回のテーマは「働き方改革」の「若者人材育成」です。「若者人材育成」をよく読み解いてみると、その根っこには、深刻な“ひきこもり”問題が存在していることが分かります。
スキルに関する「アカンやつ」
ところで、"スキル"で検索すると、ロバート・カッツ氏の理論を図示した絵が大量にヒットします。
この絵を見た瞬間、「あ、これはアカンやつだ」と思いました。『なんとなく分かったような気にさせられるが、実際には何のことやら分からん』という典型的な「だまし絵」と思ったからです(もちろん江端の主観的な感想ですが)。
"専門"力については、英語スキルであれば、TOEICテストのスコア、英検の級とあわせて、「海外のお客さまからの商品問い合わせメールに対応した」だの「外国人が出席する会議で問題なく意思疎通ができる」だのと言えば良いでしょう。
PCスキルであれば、マイクロソフトのオフィスを使って、「Word」によるビジネス文書、「Excel」のマクロやグラフ作成の経験、「PowerPoint」でのプレゼン資料の作成などを見せて、具体的に説明できるかもしれません。
一方、"コミュ"力(=コミュニケーション能力)になると、いきなり定量的な評価や表現が困難になります。
例えば「事実や数字を使って相手を説得できるように努めている」を示すくらいなら、まあ、具体例を示せば足るでしょうが、「相手の気持ちを尊重して、相手に不快感を与えずに、自分の感情や意思を相手に伝える能力」だの、「非言語的な要素(空気を読む)に十分に注意を払うことで、推察する非言語コミュニケーション能力」に至っては、定量的な説明が不可能です。
そして、"概念化"力に至っては、説明するもアホらしいのですが、一応項目だけピックアップしておきますと、「論理的思考」「水平思考」「批判的思考」「多面的視野」「柔軟性」「受容性」「知的好奇心」「探究心」「応用力」「洞察力」「直感力」「チャレンジ精神」「俯瞰力」「先見性」だそうです。
これは技術でも技能でもなく、単なるその人間が有する固有の先天的な能力です。もし、これをスキルと言い張るのであれば、「図解 スティーブ・ジョブズの作り方」とか「1週間でビル・ゲイツになる方法」とかいう本にして、コンビニあたりで販売してもらった方が、私としては大いに助かります。
いずれにしても、私が申し上げたかったことは、具体例で説明可能な「スキル」というのは、「マイクロソフトのオフィスを使って文章や図面の作成ができること」と「TOEICのスコア*1)」くらいであるという、誠に面白くない事実である、ということなのです*2)。
*1)関連記事:「TOEICを斬る(前編) 〜悪魔のような試験は、誰が生み出したのか〜」
*2)ちなみに、面接で『私には、「論理的思考」「水平思考」「批判的思考」「多面的視野」があります』とアピールして、就職できた人がいたら、インタビューに参上させて頂きたいと思います。
閑話休題
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