Appleの不透明な先行き、サプライヤーに影響：「iPhone」に依存し過ぎる？（1/2 ページ）

[Alan Patterson，EE Times]

2002年以来の減益

　Appleは今回、2002年以来初めてとなる減益見通しを発表した。これにより、世界各国のサプライヤーに広く影響が及ぶとみられる。

　中でも特に痛手を負うのは、FoxconnやLumentum、Cirrus Logic、Skyworksなど、自社の売上高の約45％をAppleに依存しているメーカーではないだろうか。

　AppleのCEOであるTim Cook氏は、今回の業績見通しが悪化した要因を、中国の経済が予想外に低迷したためだとしているが、その見通しの影響は、米国や韓国、台湾などの電子機器メーカーにも広がっていくとみられる。Cook氏は今回言及していないが、同社が抱える根本的な問題の一つに、Appleが新しいヒット商品を生み出すことができなかったという点がある。EE Timesがインタビューを行ったアナリストたちは、「Appleは、勢いを失いつつあるのではないか」とみているようだ。

「Apple Watch Series 4」などの新製品の発売を喜ぶTim Cook氏（中央） 出典：Apple

　中国のSinolink Securitiesの技術部門で責任者を務めるAndrew Lu氏は、「Appleにとって重要な問題は、イノベーションが不足しているという点だ。米中間の貿易戦争により、中国人たちが自国メーカーの携帯電話機を支持するようになってきている」と述べている。

　米国のFeibusTechで主席アナリストを務めるMike Feibus氏は、「Appleは、自社の世界売上高を、高価格帯のiPhoneで支えられなくなってしまった」と指摘する。

　同氏は、「特に中国では、中国のスマートフォンメーカーが高品質の製品を非常に魅力的な価格で提供しているため、うまくいかなかった」と述べる。

　アナリストたちは、「Huaweiにとって、今回のApple低迷の知らせは良い前兆だといえる。Huaweiは世界スマートフォン市場において、Appleを追い抜き第2位の座を獲得している」と指摘する。

　またHuaweiは、フラグシップSoC（System on Chip）「Kirin 980」を発表したことにより、競争力をさらに強化している。

　現在のところ、スマートフォン向け7nmプロセッサを発表しているのは、AppleとHuaweiの2社だけだ。両社のチップの製造は、TSMCが手掛けている。

　TSMCは2019年1月17日（台湾時間）に、2018年第4四半期の業績と、2019年第1四半期の見通しを発表する予定だ。2019年第1四半期の売上高は、前四半期比で約20%減少するとみられる。Lu氏によると、同社の売上高減少分の約半分は、Appleの影響によるものだという。

iPhoneに大きく依存するApple

「iPhone XR」 出典：Apple

　Appleは、さまざまな種類の問題を抱えているようだ。

　Feibus氏は、「Appleの売上高は、全体の約60％をiPhoneが占めている。さらに悪いことに、売上高全体の75％以上を、iPhoneやiPad、Macintoshなどの成熟した製品シリーズに依存している状態だ」と指摘する。同氏は、「世界第1位と第2位のスマートフォンメーカーであるSamsung ElectronicsとHuaweiは、幅広い種類の製品を取りそろえることによって、自社のビジネスをサポートしている」と付け加えた。

　「両社ともスマートフォンの他に、十分な規模を持つ活気に満ちた事業を展開しているため、スマートフォン市場で問題が生じたとしても、それを相殺することが可能だ。しかし、Appleにはそれがない」（同氏）

　米中間の貿易戦争において、Huaweiは重要なターゲットの一つとなっている。

　The Wall Street Journalによれば、米国政府は、ドイツ、日本、イタリアなどの親米国に接触し、Huawei製の部品を用いて5G（第5世代移動通信）インフラを構築した場合に生じ得る、サイバーセキュリティリスクに関する懸念を提起しようとしたようだ。だが、Huaweiへの痛烈な批判は、米国の技術産業を苦しめるという予期せぬ結果をもたらした可能性がある。

　Lu氏は「トランプ大統領は技術分野に関心を寄せていない。米国政府は自国の技術産業に大きなダメージを与えている」と述べた。