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5Gにおける「NB-IoT/LTE-M」の位置付けセルラーLPWA(1/3 ページ)

「5G NR Phase 1(3GPP Release 15)」の標準仕様が完成し、5G(第5世代移動通信)はまた一つ、大きなマイルストーンに到達した。その中で、注目を集めているのが5GにおけるLPWA(Low Power Wide Area)、具体的には「NB-IoT」「LTE-M」の位置付けだ。

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 2018年6月、3GPPが米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ(La Jolla)で開催した全体会議において、5G NR(New Radio) Standalone(SA)の新しい無線仕様のセットを「RAN#80」として承認した。これによって、5G(第5世代移動通信)エコシステムは、また一つ大きなマイルストーンに到達したといえよう。

 これは、「5G NR Phase 1(3GPP Release 15)」と呼ばれる無線標準仕様が完成したこと、すなわち5Gの商品化に向け、大きく前進したことを意味している。

 これまで筆者は、「5GはLPWA(Low Power Wide Area)テクノロジーに関して何を成し遂げられるか?」とよく質問されてきた。つまり、「5Gは、消費電力が大きく、高速で遅延の少ないアプリケーション向けに設計されたものではないのか」と聞きたいわけだ。NB-IoT(狭帯域IoT)やLTE-Mのような4G(第4世代移動通信)で仕様が決定されたタイプのテクノロジーソリューションは、既にLPWAに対応している。そのため、5G時代では、IoT(モノのインターネット)分野では他にどんなことが可能になるのかを知りたいのだろう。

 こうした質問に答えるべく、5GとNB-IoTおよびLTE-Mとの関係を見てみたい。

NB-IoTとLTE-Mを、5G仕様の一部にする


画像はイメージです

 一般原則として、任意の標準開発団体(SDO)により仕様が決定されたテクノロジーソリューションは、国際電気通信連合(ITU)による評価を受けた後、ITUのIMT-2020の最小要件を満たしていると認められる必要がある。しかし最近では、「5G」という言葉はより広いコンテキストで使われていて、将来の無線技術によって可能となる広範な種類の新しいサービスを指す場合もある。

 ITUのメンバーは、5G IoTと大容量マシンタイプ通信(5G mMTC)に関して、最低限の技術性能要件の概要を示している。例えば、デバイスのバッテリーの寿命が最低10年(推奨15年)は持つこと、カバレッジを20dBに強化すること、1km2当たり100万台のデバイスをサポートすることなどが含まれている。

 2018年初頭に3GPPは、NB-IoTおよびLTE-Mの両技術を、「IMT-2020 5G mMTCの要件を満たす5Gソリューションの候補として提出する予定である」ことをITUに伝えた。このため、両技術は極めて重要な5Gコンポーネントとなることが期待されている。

 また、5G仕様の一部としてNB-IoTおよびLTE-Mを進化させ、「5G標準」としてのNB-IoTおよびLTE-Mの位置付けを確固たるものにし、LPWAのユースケースに引き続き対処する方針も決定している。

 このような決定が行われた主な理由としては、「投資の回収」と「設置されたLPWAデバイスの寿命」の2つが挙げられる。

 1つ目の理由には、現時点で既にグローバルに行われているLPWA投資を最大限に活用したいという業界の要望が表れている。GSMA(GSM Association)によれば、世界中で60を超える商用LPWAネットワークが既にサービスを開始しているという。このため、既に構築されているLPWA関連のネットワークやインフラストラクチャを活用することは、同業界にとって利益となる。

 2番目の理由は、LPWAデバイスは10年以上の寿命が期待されているにもかかわらず、ほとんどのLPWAデバイスが過酷な環境に設置される可能性があることに由来する。一例として、下水マンホール(水量計測用)、リモートロケーション(警報または環境監視用)、自動車の車体(セキュリティアラーム用)、スマート農業といった具合だ。

 このため、5GコアネットワークでLPWAデバイスをサポートするには、IoTの長いサービス寿命を確保することが不可欠になる。これを実現するために、3GPPでは、5GコアネットワークにおけるNB-IoTとLTE-M無線アクセスネットワークのサポートや、NB-IoT/LTE-Mが5G NR周波数帯でNRと共存できることの保証(例えば、NRキャリア内部でのNB-IoTとLTE-Mの配備に関する柔軟性を含む)を、3GPP Release 16の一部として含めるオプションを検討している。

 これにより、必要に応じてソフトウェアアップグレードを行うだけで、現時点で配備済みのLPWAデバイスを5Gへとスムーズに移行することが可能になる。さらに、5G標準の一部としてのNB-IoT/LTE-Mの長期ステータスを確固たるものにすることができる。

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