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米中ハイテク戦争の背後に潜む法律バトル湯之上隆のナノフォーカス(8)(3/4 ページ)

激化の一途をたどる米中ハイテク戦争。実は、これは“法律バトル”でもある。本稿では、中国の「国家情報法」および米国の「国防権限法2019」を取り上げ、これら2つがどのようにハイテク戦争に関わっているかを解説する。

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米国の「国防権限法(NDAA2019)」の概要

 米国の国防予算は毎年、法律案として米政府から上院と下院に提出される。上院と下院では、政府への“注文”が付けられ、上下両院でそれらを整理・調整したうえで採決し、大統領が署名するとその“注文”は「法律」として成立するという。法律であるから、それは強制力を持つことになる。

 では、米トランプ大統領が8月13日に著名して成立させた「米国防権限法(NDAA2019)」には、何が定められているのだろうか。一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)の論文注2)からの抜粋を以下に示す。

注2)CISTEC 調査研究部 次長(国際担当) 田上 靖『〈1〉 米国国防権限法2019 の概要− 輸出管理・投資規制及び中国企業の通信・監視関連機器等の購入・利用禁止等の重要規定の解説』(CISTEC Journal 2018.9 No.177、7〜22ページ)

米国政府機関に対し、「Huawei社、ZTE社等の通信・監視関連の機器・サービスを利用している機器・システム・サービス」の購入・取得・利用、及び「Huawei社、ZTE社等の通信・監視関連の機器・サービスを利用している、機器、システム又はサービス」を利用している企業・拠点との契約・取引を広汎に禁止する。

更に、「これらの5 社の機器・サービスを利用している機器・システム・サービス」を利用している企業・拠点との契約・取引等も禁止する。

また更に、国防長官、FBI 長官らの協議により、中国政府(党)に「所有/支配/関係」していると合理的に認められる企業の同様の機器、サービスの購入、利用の禁止も規定されている。


 さらに、上記文献の著者は、米国法律事務所に問い合わせた結果も総合すると、以下のようになると記載している。

  • 中国企業(外資企業を含む)や外国企業が、これら中国企業の通信・監視関連製品等が使われている機器、サービスを利用している場合は、米国政府機関と取引が困難となる。
  • 米国政府機関が取引を禁止される企業の、業種は問わない(情報通信関連企業だけではない)。
  • 米国政府機関と直接取引していなくても、政府機関に納入される製品用のシステムや部分品を納めている2次、3次サプライヤーの場合も、その納入企業から上記の中国企業の部分品、システム等を利用していないかの確認を求められ、利用していれば取引できなくなる可能性が大きい。
  • 外資企業の意思決定に際して、企業内の共産党支部の了承が必要な場合も、中国の「支配/関係」下にあるとみなされる可能性が大きい。
  • 通信機器には、サーバー、ルーター等だけでなく、スマートフォンも含まれる。
  • 施行までの猶予期間は2年(2020年8月13日から禁止)。

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