ドローン同士が直接通信、ニアミスを自動で回避:目視外飛行でも安全に運用
情報通信研究機構(NICT)は、ドローン(小型無人航空機)同士が直接通信を行い、ニアミスを自動的に回避する実験に成功した。
飛行制御装置でドローンマッパーとフライトコンピュータを連動
情報通信研究機構(NICT)は2019年1月、ドローン(小型無人航空機)同士が直接通信を行い、ニアミスを自動的に回避する実験に成功したと発表した。
NICTはこれまで、目視外飛行環境でのドローンの利活用に向けて、920MHz帯を用いた機体間通信による位置情報共有システム「ドローンマッパー」を開発し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のDRESSプロジェクトなどで実証実験を重ねてきた。ただ、これまでは操縦者の手元にある地上局を介してドローンの飛行制御を行っていた。
今回の実証実験では、ドローン同士が通信を行い、互いの位置情報や識別番号を共有することに加え、機体間通信で得られた位置情報をドローンの飛行制御に活用するための飛行制御装置を新たに試作し、これを搭載した。
飛行制御装置は、ドローンマッパーで得られる周辺のドローンの位置情報に基づき、接近中のドローンを検知する。さらに、接近するドローンが飛行する方向の情報などを分析し、ドローン自らが飛行速度や飛行方向を制御する。これによって、操作者を介さなくても相手機とのニアミスを回避して、目的地まで飛行することが可能だ。
NICTは2018年12月中旬、異なる操縦者が運用する複数のドローンに、ドローンマッパーと飛行制御装置を搭載し、埼玉県秩父市のグランドで実証実験を行った。この試験では、「3機のドローンによるニアミス」「編隊飛行を行う3機のドローンと対向のドローン1機」「1対1の回避飛行」など、いくつかの状況を想定して実験を行った。ドローン同士が約40mまで接近すると、自動でニアミスを回避するよう行動し、安全距離を保ちながら、目的地に到達できることを確認した。
今回の実験は、飛行速度を毎秒1mに設定するなど比較的ゆっくりとした状況で行った。次のステップではもっと速い飛行速度で性能試験を行う計画だ。さらに、ドローンと有人ヘリコプターにおける接近検知や飛行制御といった試験も予定している。
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