半導体業界、今後2年は減速もその後は回復基調に:不確定要素も多いが(1/2 ページ)
米国の市場査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるベテランアナリストBill McLean氏は、半導体業界の見通しについて、「現在、中国および欧州の貿易や、メモリサイクルが底に達したことなど、さまざまな状況が不透明な中、半導体業界は、今後2年間で減速していくが、その後再び勢いを取り戻すとみられる」と述べている。
米国の市場査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるベテランアナリストBill McLean氏は、米国シリコンバレーで行われた年次イベントの中で、「現在、中国および欧州の貿易や、メモリサイクルが底に達したことなど、さまざまな状況が不透明な中、半導体業界は、今後2年間で減速していくが、その後再び勢いを取り戻すとみられる。長期的には、中国に関してそれほど懸念する必要はないだろう」と述べた。
同氏は、「例えば、売上高成長率に関しては、2019年には1.6%拡大するが、2020年には0.9%減少する見込みだ。しかし、その後3年間は7〜13%で伸びていくとみられる」と述べる。米国の市場調査会社であるGartnerやVLSI Researchは、2019年1月初めに、「半導体業界は、最近の減速により、不況を回避することができる」との見解を発表していることから、McLean氏もこれとほぼ同じ見方をしているといえる。
不確定要素が増えている半導体業界
IC Insightsは、「2019年の半導体チップのASP(平均販売価格)は、2年間に及ぶメモリのスーパーサイクルが終息することで、6%下落する見込みだ。米中間の貿易摩擦や、英国のEU離脱(Brexit)などの問題については、2019年春には落ち着くと期待されている」と述べる。
McLean氏は、「Brexitの問題や、米中間の関税25%引き上げなどが、2019年3月の最終期限までにどう決着するかによって、2019年の動向は、より明確に見えてくるだろう。中国と米国にはいずれも、貿易戦争を終わらせるための動機は十分にある」と述べる。
また同氏は、「米連邦議会が最近、中国のHuaweiとZTEの両社に米国製半導体を販売することを禁止する法案を発表したことから、大規模な経済戦争に発展する恐れがあった。実際にそうなるとは考えられないが、交渉のための材料にはなるだろう」と述べる。
HuaweiのCFO(最高財務責任者)が、イラン向け違法輸出の嫌疑で、米国への身柄引き渡しを要求されたという事件を受け、世界経済に積み重ねられてきた不確定要素が、さらに追加されたことになる。
近年、マクロ経済の変化は、半導体予測に対して支配的な影響を及ぼしている。2019年のGDP成長率は、ほぼ全ての国において0.2〜0.3%ほど下落する見込みだ。ただし、インドは例外で、0.1%の上昇が予測されている。
McLean氏は、「半導体業界は現在も、ホリデーシーズンに発生した過剰在庫の一部を解消すべく取り組んでいることから、2019年前半の見通しは決して明るくないものの、同年後半にはかなり上向くとみられる。貿易関連の問題が落ち着けば、2019年後半は好調が期待できるだろう」と述べる。
良いニュースとしては、4300億米ドルを超える規模の半導体業界の売上成長率は、近年の6%と9%から上昇して、11%に達したということがある。
メモリチップメーカーは2018年、同市場の成長に乗じて、DRAMの設備投資に約70億米ドル、NAND型フラッシュメモリに100億米ドルも投資した。IC Insightsは、「2019年は半導体メーカー全体が、設備投資を13%削減して価格の上昇を図ると予想される」と述べている。
メモリ市場のリーダーであるSamsung Electronicsは2017年に、設備投資を240億米ドルに倍増させたが、2019年の動向はまだ読めない。
McLean氏は、「これほど積極的な企業は見たことがない。Samsungが設備投資を拡大したのは、同社に追い付くことはできないことを中国に思い知らせるためだったと考えられる」と述べている。同氏は、「Samsungは、2019年の設備投資を180億米ドルに縮小する」と予想している。
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