240kmで走行中の列車と1.5Gbpsでデータ伝送:地上無線局をRoFでネットワーク
日立国際電気と鉄道総合技術研究所(鉄道総研)、情報通信研究機構(NICT)は、ミリ波(90GHz帯)無線通信システムを用い、時速約240kmで走行する列車と地上間で、1.5Gビット/秒のデータ伝送に成功した。
現行の対列車通信システムに比べ750倍も高速
日立国際電気と鉄道総合技術研究所(鉄道総研)、情報通信研究機構(NICT)は2019年1月、ミリ波(90GHz帯)無線通信システムを用い、時速約240kmで走行する列車と地上間で、1.5Gビット/秒(bps)のデータ伝送に成功したと発表した。現行の対列車通信システムに比べ750倍の速さとなる。
データ伝送実験は、北陸新幹線(富山〜金沢間)の地上機器室に中央制御装置、線路わきの約2kmの区間に4局の地上無線局、列車の後部運転席内に車上無線局を、それぞれ設置した。地上無線局をファイバー無線(RoF:Radio over Fiber)でネットワーク接続し、中央制御装置に接続したのが、今回の大きな特長である。RoFネットワークを介して列車を自動追尾し、最小限の電波放射で安定かつ高速の通信を維持する機能を備えることで、高速走行中においても大容量のデータ通信を可能にした。
具体的には、地上無線局を軌道に沿って配置し、無縁エリアを一次元的に構築する方式とした。その上、無線信号を光に変換し光ファイバーを用いて低損失に伝送するRoF技術を導入した。列車の移動に合わせて、無線エリアを自動的に切り替えるシステムである。これによって、無線信号で伝送する距離を最小限に抑えることができた。
今回は、システム構成と地上無線局の配置を主に鉄道総研が、RoF技術を日立国際電気とNICTが、それぞれ開発した。また、車上無線局と地上無線局には日立国際電気が開発した90GHz帯の化合物半導体を搭載した。
走行試験では、時速240kmで走行する列車と地上に配置された中央制御装置間で、1.5Gビット/秒の大容量データ通信が行えることを確認した。地上無線局の切り替えに伴うハンドオーバーも発生しなかったという。列車の後部運転席に設置したカメラで撮影した映像をリアルタイムで伝送する実験も行った。
今後は、ミリ波通信とRoF技術を活用した高速鉄道向け無線通信システムの実用化に向けて、さらなる技術検討に取り組む。併せて国際電気通信連合(ITU)において、今回実験に用いた周波数帯を含め92.0G〜109.5GHz帯の鉄道無線応用に関する国際標準化活動を推進する計画である。
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