外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」:世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15)(6/10 ページ)
ここ最近、連日のように報じられている「外国人労働者の受け入れ拡大」。メディアで報じられている課題はともかく、この外国人就労拡大で際立っているのが、日本の「ブラック国家ぶり」です。このブラックぶりは、驚きを通り越して、むしろすがすがしいほどなのです。
超タカビーな募集要項
ぶっちゃけて言えば、非常にタカビーな視点の募集要項です。しかし、それでも、正直に記載している点は高評価です。日本国内のブラック企業の経営者は、この日本政府に習って、ここまで正直に記載すべきだと思います。
外国人労働者の条件の良さ(?)をピラミッド型で記載してみると、こんな感じです。
基本は、家族(配偶者と子)の取り扱いが大きく違っていることです。帰化した人は日本人ですので、日本人全く同じ権利が発生します。定住者は、家族も日本に永住できる権利を得ることができます(できない場合もあります)
特定技能1号、2号の位置付けは ―― もうお分かりでしょうが ―― 「出稼ぎ」です。2号は家族を連れてきてもいいですが、1号にはそれができません。
家族を引き連れてきた場合、帰国後の居所が保証されませんし、5年間も外国に住めば、帰国したくなる家族が出てくるのは当然です*)。
*)私も2年間の米国滞在の経験がありますが、嫁さんの反対がなければ、米国の永住権を求めて動き出していたに違いない、という確信があります。
留学生については、家族うんぬんの話は論外ですし、そもそも、学生は学業が本分ですので、労働時間も厳しく制限されているくらいです。
必要なのは「現場で汗を流してくれる人」
さて、この「特定技能1号」「特定技能2号」を従来の外国人労働者の制度と比較してみると、我が国の「ブラック国家戦略」の姿が際立って見えてきます。
つまり、これまでの外国人労働者というのは、日本国に国益をもたらす「エリート労働者」でした。上表の対象業務を見ていただければ明らかですが、明らかに知的レベルの高い、高給の対象となる職種ばかりです。
ところが、今、我が国に本当に必要なのは、そういう類の労働者ではなく、「現場で、汗を流してくれる人」なのです。
学歴不問、実務経験不問という条件が、それを示しています。その一方で、日常会話ができるレベルの日本語スキルは要求されています。これは、政府または企業に、日本国内での日本語教育を行う意思が全くない、ということです。
実際に、対象職業は、現場で仕事を覚える実地訓練(OJT: On-the-Job Training)タイプの職種に限定されています。
以上をまとめますと、「特定技能1号」「特定技能2号」の外国人労働者の労働環境とは、
・語学(日本語)はもちろん、IT、法律、制度、資格取得などの教育を行う意思もなく、
・専門知識を有するスペシャリストや、将来の幹部候補のジェネラリストとしての育成の意思もなく、
・出世とか昇進とかの概念が、一切ない
ということです。もうこれは、
―― どこからツッコんだらいいのか分からないくらい、完璧なブラック企業戦略
と言えます。
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