検索
連載

外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15)(7/10 ページ)

ここ最近、連日のように報じられている「外国人労働者の受け入れ拡大」。メディアで報じられている課題はともかく、この外国人就労拡大で際立っているのが、日本の「ブラック国家ぶり」です。このブラックぶりは、驚きを通り越して、むしろすがすがしいほどなのです。

Share
Tweet
LINE
Hatena

必要な職種の定員数

 さて、現状、「特定技能2号」についての運用はまだ決まっていませんが、「特定技能1号」については、5年後に30万人程度になり、その後もその人数を維持するように政府がコントロールする、と読み取れます(現時点では、5年後に問答無用で帰国ですので、人数の維持は可能です[今後、運用が変わる可能性もありますが])

 また、必要となる職種もその定員数も決まっています。下図は、その定員数を「合計100人の比率」で示した円グラフです。

 このグラフは、そっくりそのまま、日本国における各業種の人手不足のリアルを示しています。介護の絶望的な人手不足は、既に、こちら(https://eetimes.jp/ee/articles/1810/19/news034_5.html)で語り尽したので、割愛します。また、外食業、建築業、宿泊業、農業の人手不足(後継者問題も含む)は、新聞やニュースを見ていれば、普通に出てきます。

 一方、「ビル清掃」は意表を突かれた感じでしたが、よく考えてみれば、確かにあの膨大な数の巨大なビルの「トイレの清掃」が滞ったら、日本国の労働意欲の減退は避けられないでしょう(今後は、私たちは「通常業務」に加えて「フロア掃除」「トイレ掃除」を行うことになるだろう、と思っています)

 もう一つ、意外に感じたのは、製造業の求人が意外に少ないということです。さすがに、自動車、機械、電気機器など「モノ作り」のフロントに、外国人労働者をOJTとして投入することには、業界としても抵抗があるのかもしれません(こっちは、「高度外国人材」(つまり「エリート外国人労働者」)の方に分類される傾向が大きいのかもしれません。

「1号」「2号」の違いとは?

 次に、「特定技能1号」「特定技能2号」の違いを、試験制度の違いから説明してみます。現時点では「2号」については、何も決まっていませんが、基本的には「1号」を修了した人向けの試験として、見られているようです。

 つまり、この試験制度は、「高等専門学校(高専)」と「大学」と「大学院」のパラダイムを使うと分かりやすそうです。

 「1号」の試験は、外国人であれば誰でも受験可能ですが、どうやら、日本国で技能実習生をしていた人間をメインターゲットとしているようです。

 ちなみに「技能実習生」とは、研修生として技術や技能を実践的に学ぶために、研修を受けた企業等と雇用契約を結んで働いている外国人のことです。この制度は、「1号」「2号」とは異なり、「国際社会との調和」「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転」「開発途上国等の経済発展の為の"人づくり"」という理念が(一応)あります*)

*)現在、社会問題となっている事件が多数ありますが、今回は割愛します。

 この技能実習生の約半数が、1号の試験を受けると予想されているそうです(が、根拠となる資料は見つけられませんでした)。この「技能実習生」を「高等専門学校生」と見なすと、「1号の試験」は「大学入試」であり、「1号の合格者」は「大学生」と見なせます。さらに「2号の試験」は「大学院の試験」であり、「2号の合格者」は「大学院生」と見なせます。

 つまり、今回の「特定技能1号」「特定技能2号」の制度は、「技能実習生のキャリアパス」のようにも見える訳です。もちろん、この3つの制度では、どの時点においても「帰国」が発動する可能性もあります。

 しかし、「特定技能2号」は、家族随伴可能で、かつ、無試験での更新申請が可能となります。原則として更新申請を続ければ、名目上は永住権と同様の環境を維持できることになりますし、ちゃんとした成果と実績があれば、永住権の申請も可能となるはずです。

 つまり、このクエスト(冒険)のスタートは「技能実習生」で、ラスボスが「永住権取得」です。その間、魔王の気まぐれで発生する「帰国」のリスクにおびえながら、日本国のために戦い続ける勇者、というわけです。

 ―― なんという、エゲツない・・もとい、巧妙な人間心理に付け込む、ブラックな制度設計なのだろう

 私は、思わず感嘆の声を上げてしまいました。

「1号」の試験は“地元受験”が開催される

 とはいえ、普通に考えれば、これが日本の謀略であることくらい、誰でも気が付きそうなものです。そもそも、「1号の試験」を受験する為だけに、高い金を払って、わざわざ来日するだろうか? と思いました。

 そこで、この「1号の試験」の受験会場を探したら、なんと、地元受験が開催されるようです ―― しかも年6回も。

 当然ですが、この試験開催国は、日本国政府が「1号の外国人労働者」をかき集めたい国であることを示しています。募集要綱の内容こそ「タカビー」ですが、実質は、膨大な費用を投じても現地受験を実施しなればならないという、我が国の窮状が露呈しているとも言えます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る