外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」:世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15)(8/10 ページ)
ここ最近、連日のように報じられている「外国人労働者の受け入れ拡大」。メディアで報じられている課題はともかく、この外国人就労拡大で際立っているのが、日本の「ブラック国家ぶり」です。このブラックぶりは、驚きを通り越して、むしろすがすがしいほどなのです。
どれだけ増やせるのかをシミュレーションする
さて、ここからは、「特定技能1号」「特定技能2号」の制度によって、実際に外国人労働者をどれだけ増やせるか、というシミュレーション結果を示します。
シミュレーション条件は、以下の通り。
(1)1号試験の合格者は、今年(2019年)は4万人として、最初の5年間に4000人ずつ増加させ、5年後からは6万人で固定する(これで、1号試験の合格者数は常に30万人で推移する)
(2)1号試験の合格者の平均年齢は26歳、分散3.5歳とする
(3)1号の外国人労働者は5年後に帰国の途に付く。ただし、2号試験に合格した場合は、更新申請を繰り返して65歳まで日本で働くことができるが、65歳で帰国する
(4)1号の外国人労働者全員が2号試験を受験するものとし、その合格率は(取りあえず)40%とする(シミュレーションのソースコードはこちら)
さて、シミュレーションの結果は、以下の通りでした。
政府は、1号の外国人労働者の5年帰国を厳密に実行することで、30万人を維持しますが、2号については、5年帰国の制限が解除されるので、徐々に人口が増えていきます。
ところが、2号の外国人労働者も、65歳以上の求人がなくなることで、帰国せざるを得なくなります。
その結果、2号の外国人労働者の人口も45年後には一定数で安定することになります。具体的には、2065年に、1号、2号合わせて、115万人で安定する計算になります(永住権を得られる人もいると思いますが、ここでは計算対象としていません)
つまり、この条件においては、現状の外国人労働者128万人(2065年度にはもっと増えていると思いますが)に加えて、将来的に、115万人が追加できることが予想されます。
さて、この計算では、2号の試験の受験者を1号の外国人労働者の全員として、合格率を40%としましたが、この40%を、0〜100%の間で変化させた時の、最終的な1号と2号の合計人口を計算してみました。
政府は、1号と2号の試験をコントロールすることによって、自由に外国人労働者の人口を調整することが可能な立場にあります。現状、1号の外国人労働者の人口を30万人としていますが、これを増減することも可能です。
つまり、日本国政府は、この制度を精緻にコントロールすることによって、日本国内の労働力の需給を調整できる ―― ハズです。
しかし、私には大きな不安要素が2つあります。
- 私のシミュレーション結果では、2065年あたりの、外国人労働者はどんなに頑張っても500万人が限界です。一方、私の別の人口シミュレーションでは、2065年までの日本人の人口の減少数は4000万人です。人口減少を、外国人労働者で賄うという戦略は、「焼け石に水」なのです
- 現状の「特定技能1号」「特定技能2号」制度は、日本国にとって都合が良すぎる制度設計となっています。労働力だけ日本国に搾取されて、キャリアアップの機会もなく、自分と家族の将来に何の保障もない、こんな制度に応募してくる外国人が、どれだけいるのか ――
私はとても不安です。
「日本」というブランドは、まだ世界に通用するのか ―― 。私たちは、「日本ブランド」という幻想を見ているだけではないのか ―― 。
2019年から始まる「特定技能1号」「特定技能2号」制度の運用によって、これがはっきりすることになるだろうと思います。
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