新たな世界ハイテク戦争の構図 ―― 米国、中国、Huaweiの3者のにらみ合い:湯之上隆のナノフォーカス(10)(4/4 ページ)
米中におけるハイテク戦争では、2018年末以降、Huaweiが台風の目となっている。しかし、筆者には、3つの疑問がある。本稿では、3つの疑問について論じるとともに、世界のハイテク戦争が、米中二国間の単純な対立ではなく、米国、中国、Huawei3者のにらみ合いの構図になっていることを示す。
新たな世界のハイテク戦争の構図とは
Huaweiは、中国政府に頼らず、自力で急成長を遂げてきた。社員18万人中8万人の技術者を擁し、売上高は15年間で約40倍の10兆円超となり、AmazonとGoogleに次ぐ世界3位の研究開発費約138億ドルをつぎ込み、国際特許出願数世界1位、スマホ出荷台数シェアはAppleに肉薄する世界3位、通信基地局売上高シェア1位となった。
恐らく、通信基地局台数では世界の5割以上を制しており、もし、インドやアフリカがHuawei製を採用すれば(その可能性は極めて高いが)、その優位性は盤石になるだろう。
これまで筆者は、「米国と中国がハイテク戦争を行っている」と世界を見てきた。しかし、それは間違っている。新たな世界のハイテク戦争の構図は次の通りである(図3)。
米国は、「中国製造2025」と「国家情報法」を警戒している。そして、世界の通信基地局を制したHuaweiを、「国防権限法」で排除しようとしている。
一方、中国は、Huaweiを支配下に置こうとしている。そして、中国政府がバックについている国営企業のZTEがHuaweiを米国に売った可能性があり、中国政府はHuaweiに対して「助けてほしくば、ひざまずけ」と言っているのかもしれない。
ところが、Huaweiは米国政府を「米憲法違反」で訴えた。また、中国政府の要求を拒絶し、一切、屈しない姿勢を見せている。
つまり、世界のハイテク戦争は、米国、中国、そしてHuaweiの3者のにらみ合いの様相を呈している。個人的に筆者は、「Huawei、がんばれ!」とエールを送りたい。
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2019年5月22日(水)に、東京・港区芝公園 コンベンションホールAP浜松町にて、「【緊急開催】 米中ハイテク戦争とメモリ不況を生き抜くビジネスの羅針盤」と題したセミナーを行います。米中ハイテク戦争の背景や、半導体メモリの市況などについて、筆者が講演します。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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