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マイニングキットの内部分析で見えてくることこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(33)(3/3 ページ)

今回は、最先端プロセスを使用した仮想通貨のマイニング専用チップを搭載するマイニングキットの内部を詳しく観察していく。その内部はある部分でスーパーコンピュータをも上回る規模を備えており、決して無視できる存在でないことが分かる――。

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スパコンと比較しても……

 弊社では年間数10種類のFPGAボード、GPUボード、サーバボード、PCボードなどを観察しているが、いずれにもノウハウやセオリー、特徴がある。マイニングボードも同様だ。

 図4は、比較である。左は今回扱ったAntminer S15/T15のマイニングキットである。キットにはインタフェースICやホストマイコンなども搭載されているので、半導体の搭載数量は若干だがさらに増える。マイニングキット1台にトータルで1800億トランジスタが詰め込まれていることが判明した! 1800億トランジスタも1台の機器(メモリーストレージの大きいものを除く)に搭載されるものはあまりない。


図4:マイニングラックとスパコンラックの比較 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 比較対象は現在最高速のスーパーコンピュータの1ラックである。ラック内部の全メモリも一つ一つカウントしチップ開封し、トランジスタ数を算出した(実際のスーパーコンピュータはこれがXXXX倍[4桁倍]される)

 スパコンは1ラックに1兆を超えるトランジスタと搭載する。マイニングキットの10倍規模だ。しかしトランジシタの多くはメモリなので、メモリを除いたプロセッサのトランジスタ数の比較を行った。

 マイニングキット1台の方がスパコンラックのプロセッサよりものトランジスタ数が多い!! こうした技術を立ち上げ運用していくことで放熱、あるいはより低消費電力の新たな「ノウハウ」が生まれてくるのではないだろうか。マイニングを否定するのは簡単だ。見なかったことにすればよい。しかしここにも最先端の技術を使い、明らかに従来よりも高性能で低消費電力のものが生まれている。存在する以上は見ないわけにはいかない。

 今後も弊社はマイニングもスパコンも観察を続けていく。そして内部を見て判断していく。2019年4月には第2世代の7nmマイニングチップを用いたマシーンも手元に届く予定になっている。これも今から観察が楽しみだ。

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


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