理研ら、半導体量子ビットの量子非破壊測定に成功:エラー訂正回路の実装を可能に(1/2 ページ)
理化学研究所(理研)とルール大学ボーフム校らの国際共同研究グループは、電子スピン量子ビットの量子非破壊測定に成功した。
ST量子ビットを補助量子ビットとして利用
理化学研究所(理研)とルール大学ボーフム校らの国際共同研究グループは2019年4月、電子スピン量子ビットの量子非破壊測定に成功したと発表した。半導体量子コンピュータの実用化に必要なエラー訂正回路の実装を可能とする技術である。
今回の研究成果は、理研創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループの中島峻研究員、野入亮人特別研究員、樽茶清悟グループディレクター(当時は東京大学大学院工学系研究科教授)、量子システム理論研究チームのダニエル・ロスチームリーダー(バーゼル大学物理学科教授)、ルール大学ボーフム校のアンドレアス・ウィック教授らによるものである。
量子ドット中の電子スピンを用いた半導体量子コンピュータは、既存の集積回路技術を応用することができるため、大規模化に適している。ただ、不純物や熱などの影響で量子コンピュータの情報が失われる可能性がある。このため、実用化に向けては、発生したエラーを検出して訂正する量子エラー訂正回路を実装する必要がある。ところが、これまでは量子非破壊性などが実験的に検証されたことはなかった。
国際共同研究グループはこれまで、GaAs/AlGaAs(ヒ化ガリウム/ヒ化アルミニウムガリウム)ヘテロ接合基板上に「三重量子ドット構造」を作製。この試料が電子スピン量子ビットとST量子ビットのハイブリッド量子デバイスとして活用できることを実証してきた。今回、このST量子ビットを補助量子ビットとして利用し、電子スピン量子ビットの量子非破壊測定を行った。
電子スピン量子ビットの量子非破壊測定を行う手順はこうだ。まず、電子スピン量子ビットにマイクロ波を一定時間照射し、電子スピン共鳴を起こさせる。スピンは照射する時間の長さに応じて、「上向き」と「下向き」の状態間を周期的に振動する。この現象を利用すれば任意の量子ビット状態にすることができる。
次に、電子スピン量子ビットと補助量子ビットを一定時間結合させ、量子力学的な相関を持たせる。この後、補助量子ビットを測定すれば、電子スピン量子ビットの状態を直接測定しなくても、スピンの向きが分かるという。
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