車載インバーターのSiC採用、2021年以降に活発化:PCIM Europe 2019でロームが講演(2/3 ページ)
ドイツ・ニュルンベルクで毎年5月ないし6月に開催されるパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe」において、年々存在感が高まっているのが、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)向けのパワーエレクトロニクス技術の紹介に特化したブース「E-Mobility Area」である。
「フォーミュラE」での取り組み
ロームは、電気自動車のレースシリーズ「フォーミュラE」において、Venturiのテクノロジーパートナーとしてインバーター向けのSiCパワーデバイスをVenturiのレースチームに提供してきた。フォーミュラEのシーズン4(2017〜2018年)では、SiC-MOSFETとSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)を搭載したフルSiCのインバーターをVenturiと共同開発し、IGBTとSiダイオードを使った既存のインバーターに比べて、重さを6kg、サイズを43%低減することに成功している。法貴氏は「インバーターも、DC-DCコンバーターなどと同様に、SiCを採用するメリットは分かりやすい。とはいえ、SiCを使用すると非常に高価になってしまう。スイッチング周波数がそれほど高くないインバーターでは、(スイッチング損失の低減や小型化といったメリットよりも)高いコストが課題だ」と指摘した。
ロームは、フォーミュラE用にVenturiと開発したインバーターをPCIM Europe 2019のブースに展示した。左は、Siデバイスを用いたシーズン2(2015〜2016年)のインバーターで、右がフルSiCのシーズン4(2017〜2018年)のインバーター(クリックで拡大)
第4世代のSiC-MOSFET(トレンチ型)を開発中
法貴氏によれば、ロームは現在、第4世代のSiC-MOSFET(トレンチ型)を開発中だという。市場要求に応えるべく、ゲート電圧は15V、耐圧は750V、1200V、1700Vをラインアップする予定だ。さらに、パッケージング技術の開発も進める。「既存のパッケージではSiCパワーデバイスの特性を100%引き出すことが難しいので、パッケージの開発も不可欠だ。当社は、低インダクタンス、ハイパワー、より多くの機能を追加可能、という3つの方向性でパッケージの開発を進めている。これに沿って、車載アプリケーション向けのパッケージも開発中だ」(法貴氏)
なお、ロームは車載規格AEC-Q101に準拠したSiC-MOSFETやIGBTのラインアップを強化している。2019年3月には、トレンチゲート構造を採用した、AEC-Q101準拠のSiC-MOSFET「SCT3xxxxxHRシリーズ」に新たに10品種を追加したと発表した。
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